セミナーでは同じく、個人で成果を上げる方法、つまりドラッカーの仕事論についても簡単にご紹介しました。
ドラッカーの経営論はヒトを中心においています。ですから個人が成果を上げる方法を身につけていることが重視されています。
ドラッカーは、「ヒト」という資源は時間と知識でできている と述べています。
このように単純化することで具体的に仕事で成果を上げる方法が明確になります。
ちなみに、この「知識」とは、本の中に書かれているようなものではありません。本の中に書かれているのは情報であり、知識とは情報を成果に結びつける能力を指しています。
ですから、いわゆる知識労働者とは、「マニュアル・手順書に書かれていることを超えて価値ある行動を取れる人・上司の指示を超えて価値ある行動を自主的に行う人」のことを指すととらえるとわかりやすいかと思います。
ドラッカーは、
成果を上げることは習慣である。実践的な能力の集積である。
と述べています。
その意味は、5つの具体的な項目を思考習慣にまでして、日々実践することが成果を上げる行動そのものであるということです。
その5つとは次の通りです。
①時間
時間こそ最大の制約条件。時間をまとめて成果に向けて投入する。成果が上がらないのは時間を活用せずに浪費している証拠。
②貢献意識
成果に焦点を当てて貢献する意識を持つ。そのポイントは「責任」。大きな成果を目指し、仕事を大きくし、大きな貢献をする。そこには大きな責任が伴う。あげた成果の大きさに責任を感じる必要がある。
可能性の大きさを考えれば、どれほど成果が上がろうと自分の仕事としてはせいぜい及第点ととらえること。より大きな成果が可能であったはず。
また成果に焦点を当てなければ貢献とは言わない。失敗者の方がたくさん働いている場合が多いが、彼らは成果に焦点を当てず、自分に挑戦しないため失敗するのだという。
③強みを生かす
自身の得意分野を生かすことだが、強みとは成果との関係で意味を持つ。成果が上がらないなら強みではない。
強みとは色々とチャレンジしていく中で気がつくもの。自分でできることの生産性を高め、してよいことでやる価値のあることをどんどん実行する人が強みに基づく成果を上げる人。
「とりあえずやってみる」と考える思考習慣が必要。また強みは失われやすいものなので、常に強化がしなければならず、それが継続学習の必要性となる。
④集中
一度に一つのことを行うこと。新しく何かをするときは成果の上がらないことを一つやめる。
大きな成果は集中によってしか上げられない。
⑤意思決定
これは他の四つとは次元が違う。
成果を明確にし、本質的な問題に取り組み、原則・基準を明確化すること。個々の問題解決は原則の適用にすぎない。
意思決定がないと貢献すべき対象がなく、時間の浪費が起き、強みを見つけることも出来ない。まして集中する対象もないため、行動が場当たり的なものになる。
この5つの常に意識し、習慣化している人間が成果を上げるとドラッカーは説明しています。