まず強みからスタートしなければならない。すなわち自らのできることの生産性をあげなければならない。
『経営者の条件』より
これがドラッカーの強みを生かすという考え方ですが、この強みについてどうしても誤解が生まれやすいようです。
強みを生かすとは既に存在している強みを探すという意味もありますが、積極的に行動していく中で強みを見つける、もしくは作り上げていくということのほうがより重要であるということです。
この点については多くの人が誤解しているように思われます。
企業、政府機関、病院で働くエグゼクティブの多くは、自分にさせてもらえないことについてはよく知っている。
彼らは上司がさせてくれないことや、企業の方針がさせてくれないことや、政府がさせてくれないことについて気にし過ぎる。
その結果、彼らはさせてもらえないことについてこぼすことによって、自らの時間と強みを無駄にしている。
『経営者の条件』より
成果をあげるビジネスパーソンは言われる前に自分で動くものなのです。
帝国ホテルの伝説の名シェフ村上信夫総料理長は、小学校を出て帝国ホテルに入社した直後の3年間は皿や鍋等の洗いものしかさせてもらえなかったそうです。
多くの同僚は仕事に嫌気がさしてやめてしまったそうですが、村上氏は「日本一の鍋磨きになろう」と決心し、毎日、鍋がピカピカになるまで全力で磨き続けたそうです。
その結果、厳しい諸先輩たちが村上氏を認めて、徐々に重要な仕事を与えられていったということです。
私はこの村上シェフのエピソードがドラッカーの強み論を非常によくあらわしていると思っているのでよく引用しています。
(浅沼 宏和)