やろうと決めたらその瞬間にそのとおり実行されないと、つぶれる。
生きるか死ぬかの勝負をしていた時期だったので、ボトムアップをしている時間的な余裕はまったくなかった。
企業には成長のステージごとに最適の教育が必要なのだ。90年代前半のユニクロは、1人1人の社員が発想してやっていたら、進路や方向性を失っていたはずだ。
トップダウンの体制でなければ、次々と高くなるハードルを乗り越えることは難しかったと思う。
(柳井正『一勝九敗』より)
これは、トップダウンがよいのか、ボトムアップがよいのかという経営をめぐる基本的な問いに対する柳井氏の回答です。
私もほぼ同感です。
柳井氏がこの感想を抱いた90年代前半はユニクロが「斬った張った」の経営をしていた頃であると思われます。
ちなみに、日本の会社の98%は中小企業であり、その大半が「斬った張った」の真っ最中であると思います。
ビジネス書の中には、独自の強みを持つ超優良中小企業を紹介するものがよくあります。
それらの多くが、「素晴らしい経営者が、社員にやさしい経営をした結果、素晴らしい会社になりました。」という紹介の仕方をされています。
しかし、それは結果から原因を逆にさかのぼったものであると思います。
柳井氏は先代から受け継いだ衣料品店を経営し始めたとたんに、それまで働いていた社員のほとんどに辞められてしまっています。
その原因は、柳井氏の目線の高さと社員の目線の高さのギャップにあると思われます。
柳井氏は現在でもユニクロの現状から10倍ぐらいに飛躍する目標を設定しています。
柳井氏は、おそらく広島のちょっとした衣料品店の経営を始めた当初から、相当レベルの高い目標設定をすることが習慣化していたと考えられます。
目標設定を自分の力量よりかなり上に設定する傾向のある人は経営者に向いていると思います。
逆に、ほどほどの目標設定をする人はあまり向いていないように思います。
柳井氏ほどの高い目標設定をする人が社内の大半の意見であるほどほどの目標に合わせていたら、おそらくユニクロの躍進はなかったでしょう。
しかし、次のステップはすぐにきます。次のステップに来た場合にはまったく違う原理が働きます。