河辺よしろう著『社長さん! 税理士の言うとおりにしていたら、会社つぶれますよ!」 定価1,470円
河辺氏はランチェスター経営の有力なコンサルタントです。
私も税理士ですから、河辺氏のご意見はしかと受け止める必要があるでしょう。
河辺氏の立論の ①税理士批判の部分 ②ランチェスター経営の部分 にわけて検討したいと思います。
まず、河辺氏の税理士批判の概要は以下の通りです。
・「不況をしのげば一息つける」という考えは迷信。「下請け」というビジネスモデルは崩壊してしまった。脱下請けだけが生き残る道。
・ビジネスモデルとは「何を」「どこで」「誰に」「どうやって売るか」の4つを決めるだけのこと。
・小さな会社であっても4つの要素をとことん考えれば勝てるビジネスモデルが作れる。
・税理士は「経営のプロ」ではない。あくまで「税金のプロ」である。
・税理士のとんでもない経営指導を真に受けてしまうと、ウソではなく会社がつぶれてしまいかねない。
・税理士業界は過当競争になりつつある。じり貧状態になりアセっている税理士も少なくない。
・税理士が生半可な知識でSWOT分析、経営理念づくり、目標設定のあいまいな経営計画書を作成したりすることで、経営で一番大事なお客様作りに悪影響を与えることが多い。
・税理士の決算書の見方は間違っている。税理士はB/Sを重視するが、時代はP/L重視である。
・税理士は数字の先に「お客様」がいることがわかっていない。利益はお客様と向き合うことでしか生まれない。
・税理士は納税のための決算書しか作らない。その決算書をもとに経営分析しようとする過ちを犯している。
・税理士は営業経費の「投資」性にきづかない。重要な投資を削って会社を窮地に追いやってしまう。会計上の経費でも経営上の投資があることを知らない。
・税理士は経営の「目標」を設定することはできない。まず最初に目標利益額を設定してしまう。
かなり厳しい指摘ですね。
「そんなことはない!」と言いたいところですが、かなり的確な指摘でしょう。
「税理士は色々な会社を見ているから、さぞかし適切な助言ができるであろう。」との期待が企業側にあること、また実際、経営上の悩みを聞いてもらう相手が税理士しかいないという状況から経営相談がなされているにすぎないわけです。
河辺氏はきちんとフォローも入れています。
本腰を入れてコンサルティングを行っている税理士は評価しています。
中国・ベトナムの税務会計の助言を行っている岐阜の税理士
経営危機の会社に自身が出資をして経営に加わっている埼玉の税理士
自社でインキュベーターオフィスを建設し、ベンチャー企業の支援を行っている税理士
企業を組織化し、有名コンサルタントなどを招いて定期勉強会を開催する税理士
ただし、私は河辺氏が例に挙げられている税理士を経営コンサルタントとして評価する論拠があいまいであると思います。
これはそもそも経営コンサルティングとは何か?という定義の問題に関係しています。
事例の税理士はいずれも積極的に活動している点ではビジネスパーソンとして優れていると思いますが、あくまで特徴をもった経営を行っているということのように思われます。