2011年3月10日木曜日

TPPと農業とドラッカー

TPP参加するのか否かは悩ましい問題です。

TPPはかなり徹底した自由貿易の枠組みですので、これに加盟した場合、日本の農業・漁業が壊滅するかもしれないとい言うリスクがあるとの批判が行われています。

こうした問題についてドラッカーが1966年の「経営者の条件」で次のように述べています。

ドラッカーは貢献に注目することの重要さを指摘したうえで、成果として直接の成果、価値への取り組み、人材育成の3つをあげています。

そのうえで、それぞれの目的を明確にしないと成果をあげられないと述べています。

ダメな事例として当時のアメリカの農業政策をあげていて、それがTPPの話にそっくり当てはまるようです。


長年の間、アメリカ農務省は、根本的に相いれない二つの価値観に身を裂かれてきた。

その一つが農業の生産性の向上であり、もう一つが国の柱としての農家の維持だった。

前者が目指すものは大規模事業としての産業的農業だった。

後者の目指すものは保護された田園的な農家だった。

少なくともごく最近まで、アメリカの農政はこれら二つの価値観の間で揺れ動いてきた。その結果残ったものは、毎年の膨大な支出だけだった。


これが50年以上前のドラッカーの指摘です。いま読み返してもそのまま日本の国政に当てはまっています。驚くほどにです。

これは、ようするに目的を決めずにのらりくらりと議論していること自体がムダなわけです。

農家保護か生産的な産業構造を選ぶかは二者択一で間を取るという判断はないということなのです。

ドラッカーの本を読むとやるべきことを選ぶことの重要性がよくわかります。


ドラッカー理論が古びないという例、特に政治的な事例についてはこの経営者の条件に相当含まれています。

私は『経営者の条件』は政治家の必読書にすべきと思っています。


(浅沼 宏和)