だいぶ前に小説家の津本陽氏が日経新聞で連載していた「下天は夢か」の文庫本板(一~四)を古本屋で偶然見かけまとめ買いし、読み直してみました。
織田信長の生涯を扱ったものですが司馬遼太郎とは違い、一貫して流れているのは信長の政策を経済原理的にとらえていることです。
司馬遼太郎と違って、ジャーナリスティックな書き方のため、小説としての魅力には少し乏しいのですが、歴史ファンが読むと「なるほど」という内容が多々含まれています。
アマゾンでみると、厳しい書評が多く載っていますが、ビジネスパーソンにとってはなかなか興味深い内容であると思います。
そこで、津本氏の著書を通じて織田信長の事績をマネジメントの観点から少し考えてみたいと思います。
今回、小説を読み改めて考えてみたのですが織田信長の人生は大きく分けると次のような段階があると思います。
1、尾張半国を継承したものの同族との激しい内戦を繰り返し、桶狭間で今川義元を打ち取るまでの時期
2、美濃を平定し、足利義昭を奉じて京に上るまでの時期
3、朝倉攻めによって浅井長政が裏切り、義昭も信長への不満から石山本願寺、武田、上杉などを語らって信長包囲網を形成し苦しめられた時期
4、武田信玄が死に、義昭を追放し、徐々に政権基盤を安定させ安土城を築いた時期
5、各方面に軍団を派遣し、天下統一に向かいつつあったのに本能寺で明智光秀によって滅ぼされるまでの時期
いずれの時期も信長は違った困難な課題に挑んでいるのですが、司馬遼太郎の小説は楽しく読めるものの、こうした内容を詳しく知るには不十分なものでした。
司馬遼太郎の小説ではさらっと触れているだけの戦いが非常に紙一重の状況であったりすることが津本氏の本ではよくわかります。
また津本氏の信長観は、さすがに日経新聞で連載していただけあって、経営レポート的な側面が多くあります。
たとえば武田信玄が家康を撃破したのち、京に来れなかった理由も経済的に示していますし、信長の態度もそれを読み切っているからとされています。その説明は目からうろこという感じでした。
また忘れてしまわないうちに何回かに分けて私が読み取った内容をお伝えしたいと思います。