よく「給料の3倍稼いで1人前」といういいかたをします。
これを簿記的に考えてみます。
決算書を判断する指標として労働分配率があります。
労働分配率とは、人件費÷付加価値で割り出した比率で、中小企業では業種によって違いがあるものの、黒字企業の平均はだいたい50%台前半から60%ちょっとぐらいの間です。
ここで人件費=給料ではありません。
給料のほかには会社負担の社会保険料、忘年会等の各種イベントや小さいところでは茶菓子などの福利厚生費などのほか、採用費や教育研修費なども人件費です。
ですから給料÷付加価値でみるならば、おそらく40%台ぐらいになっているでしょう。
つまり黒字企業では社員が平均して自分の給料の2倍ちょっと稼いでいるというわけです。
しかし、新入社員等は自分の給料分の貢献をすることはまずないでしょうし、パートさん等も自分の給料分、つまり1倍程度の貢献しかしていないでしょう。
中小企業では一定の比率でこうした生産性の低い人たちがいるわけですから、「一人前」と呼ばれる人たちは彼らの分まで付加価値を稼いでこなければならないわけです。
その数値は平均である給料の2倍強よりは間違いなく高くなるはずですから、慣用的に「給料の3倍稼いで1人前」という言い方がでてきたと思われます。
ですが3倍稼ぐ1人前の人であってもおごってはいけません。
なぜなら、こうしたビジネスパーソンが成果を上げるためには会社の仕組みや、社内の多くの人たちのバックアップに依存しているからです。
雑用をこなしてくれる人が社内にいます。自分の名前だけでは飛び込めないような会社に「○○会社の山田です」と名乗れるために訪問が可能となります。高額な機械やシステムも会社が用意してくれています。営業車もあります。
こうしたことを考えると自分ひとりだけで3倍の成果を上げたわけではないことは明らかです。
逆に1人前のレベルに達していない人は自身が3倍稼いで業績に貢献する側に回ることを目指さなければなりません。
少なくとも平均的には2倍強の付加価値を全社で上げなければ黒字にはならないわけですから。
また自分自身で成果を上げない職務にある人は、成果を上げる人に対してどのように貢献できるかを常に考えなければなりません。
ドラッカーは成果を上げること、それに貢献することを重視していますがこういうことであると思います。