業界分析の具体例です。対象は会計事務所業界です。
当社の主要事業であるので当然分析しております。
中小企業の場合、かなりニッチな市場で闘うわけですが、こうした個別業界の特定地域の情報は適切な統計値が得られにくいでしょう。
ここで活躍するのが前にご紹介したフェルミ推定です。
では、当社が静岡県西部地域の会計事務所業界をどのように分析しているかご紹介します。
数字も実際の検討より大まかにしています。
まず基礎情報を集めます。
1県西部地域の税理士数は約650人(税理士会のHPで確認)
2県西部地域の人口は約130万人(統計より)
3会計事務所業界の市場規模は日本全体で約1兆円強(業界向け広告より)
4会計事務所事務所の平均年商約2700万円(統計より)
5県西部地域の事業所総数約4万(各市町村の統計資料を合算)
他の情報として
・人口・税理士数ともに県西部地域中、4分の3が浜松に集中している
・税理士のうち約15%は勤務税理士である
・80%以上の事務所は従業員数4人未満である
実際には、さらに細かい情報もありますがフェルミ推定はいくつかのルートから単純に推計していく方が実用的です。
以下、3つのルートからの推定根拠と結論です。
1 日本の人口と県西部人口の比率(約100:1.08)から、県西部の市場規模は約110億円と推定
2 開業税理士数(約550名と推定)と平均年商(無回答アンケート分の誤差があるとみて約2400万円と推定)から市場規模は約130億円と推定
3 事業所総数のうち会計事務所の関与しない零細規模を除外し、規模別に平均的な年間顧問報酬を割り出し、それを合算したところ市場規模は約120億円と推定。
このように3つのルートを使って市場規模を割り出した結果と私の実感による調整を加えて、静岡県西部地域の会計事務所の市場規模は約120~130億円であると推定しました。
次にこの市場においてどのような地位を得る必要があるかをパレートの法則(80:20の法則)等を利用しながら定性的判断を加えて推定します。以下、詳細の数値は非公表とさせていただきます。
その結果、会計事務所がある程度安定経営する条件は下記のとおりと割り出しました。
1 開業税理士550名の上位20%の110名まで
2 売上高上位20%以内に入る売上高●●千万円以上
3 職員数上位20%以内に入る規模は5名以上
当社ではこれを業界における経営の臨界点として常に意識しています。
もちろんより上位にいけばいくほど経営が安定するわけです。
逆に下に行けば行くほど限界的存在に近くなります。
ざっくりとした統計資料や情報しかなくても、このようにある程度具体的な数値による目標設定が可能なことがお分かりになるかと思います。
会計事務所の場合、少人数でも高収益のところもありますのでそれは独自の強み(ノウハウ・流通チャネル等)を持っているからといえますが、ここでの議論とは別の話になります。
会計事務所を例にとって分析してみましたが、業界は違えど上記のような手順を踏んで具体的な数値を割り出すと業界内における自社のポジションがある程度わかります。
もっとも、当社ではこの業界をレッドオーシャンと見ていますので、ブルーオーシャンを目指して動いています。当社のブルーオーシャン戦略についてはまた機会を改めて説明します。
どの業界も高収益企業の「座席数」はある程度限られています。「あそこは強いな」と思う企業の数を数え上げていくと市場における「残りの座席」の数がわかるでしょう。
中小企業の場合、大手企業同士の競争にくれべれば座席の数が多いため、ついつい残り座席を気にしなくなりがちなので、一度検討してみたらいかがでしょうか。