日経ビジネス1月4日号に、経営戦略論の大御所マイケル・ポーターとファーストリテーリング(ユニクロ)の柳井正社長の対談が特集されていました。
この対談はファーストリテーリングがマイケル・ポーター賞を受賞した記念に行われたものです。
以下、対談の概要です。
ポ)ユニクロはアパレルという「平凡な分野」で革新を起こした。
柳)日本はサービスとコミュニケーション分野が得意と自負しているが実は苦手だ。しかしグローバル戦略にこの二つは必須だ。
ポ)日本のサービス業は内輪の論理では優れているが国際市場で通じない。
柳)日本は無料サービスばかりで収益化できていない。効率性も問題だ。
ポ)成功したい企業は他社と明らかに違うことをしなければならない。同じことを多少良くする程度ではだめ。
柳)アパレル産業は効率的でない。
ポ)ユニクロは日本市場の独特の傾向に合わせつつ、世界中に評価される「価値」を提供できた。
柳)日本企業は世界で名前を知られていない。マーケティング能力が低い。
ポ)需要の成長は日本や欧米ではもう起きない。また新興国は金がないので多機能な高額商品ニーズは低い。全く新しい視点で一から商品を造り直し、違った方法で競争する必要がある。
ポ)先進国の企業は新興国の富裕層相手に成功している。しかし規模は小さい。巨大な事業機会は中間層・低所得層にある。
柳)全ての顧客を満足させるたった一つの戦略はない。ニーズは千差万別。誰が真の顧客か、自分はどんな価値を提供できるのかを見極め、そこから逸脱しないこと。
柳)国籍はどうでもよいが企業のDNAは大事。つまり企業文化。
ポ)国籍は大事だ。企業はどこで誕生したかが成功の源である場合が多い。
柳)日本の弱みといわれる物は反対からみると強みだ。例えば終身雇用とロイヤリティの関係。
ポ)弱みを強みに変えるという発想は重要。それこそがビジネス。
良い戦略だけでは足りない。実行が伴わないと意味がない。
素晴らしい会社には特有の個性がある。綿々と受け継がれてきたものを価値として定義し、普遍的で説得力のあるものに変えている。
ポ)優秀なリーダーを輩出する企業は、極めて規律の厳しい教育訓練を行っている点で共通する。
また早い段階で若手社員にリーダーの役割を果たす機会を与えている。
ポ)リーダーシップの究極の姿はリスクをとり大局的に考えること。
柳)CSR(社会的責任)は重要。
ポ)今後、10年20年は戦略的CSRが最も重要な新展開となるだろう。社会的問題に対して解決策を提示する立場になることが重要。
言葉の端々に両者の哲学が垣間見えて興味深い対談でした。
主にユニクロもしくは大手企業のグローバル経済への対応がテーマですが、中小企業にとっても示唆に富む部分もありました。