2010年1月7日木曜日

書評 「異業種競争戦略」 ②

昨日の続きです。

事業連鎖を5つの視点で見ることが業界の変化を知る上で有益なことがおわかりになったと思います。

次は、その変化にどう対応するかを考える必要があります。
内田氏は、そのためにはビジネス・モデルを押さえることが大切と指摘します。

ビジネスモデルは
①顧客に提供する価値
②儲けの仕組み
③競争優位性の持続
の3つの要素で構成されるそうです。

中古車買取り業のガリバーインターナショナルを例に取って見てみます。

従来、中古車販売店は車を売りたい人には入りにくいところでした。売る側はしろうとであり、買うお店はプロであるので価格が不透明になりがちでした。

ガリバーは、客から買い取った車を他の中古車販売業者に売るという新しいビジネスモデルを作りました。
明確な査定法を確立したため透明性が高く、顧客が安心でき売り上げが急伸しました。

ガリバーのビジネス・モデルを3つの要素で分析すると次のようになります。

①顧客に提供する価値
透明度の高い価格づけ、査定方法。市場価格での高額買取。

②儲けの仕組み
中古車販売業者に売却した価格と買い取り価格との差額。

③競争優位性
価格査定は本部のみで行う。現場はチェックだけを行い、チェック項目を本部に送る。これによってベテラン査定員は本部のみにいればよく、本部の査定能力も高まり全国展開も容易になる。


ガリバーのビジネス・モデルは従来型の中古車業にとっては非常にやりにくいでしょう。
上記の3つの要素がいずれも違っているからです。

内田氏は、ほとんどの異業種格闘技は3つの要素のうち1つだけを変えて争っているといいます。

そして、この戦いに勝つために大事なのはライバルの儲けの仕組みを知っておくことだそうです。
異なる世界の者同士は全くコスト構造が異なるため、その違いを強みに変えて競争に生かすことが必要になるわけですね。

また、3つの要素を分析しておけばライバルがどのように仕掛けてくるかが予測できるわけです。

さらに事業目的の違いも意識しなければならないといいます。
目的が異なれば戦い方も違ってくるわけです。

たとえばマイクロソフト社はソフトを売ることが事業目的です。
ところがグーグルは似たようなサービスを無料で行っているのです。
それはグーグルの目的が検索と広告をセットにして売るからできることなのです。

このように目的が違えば戦いが違ってくるのです。

内田氏の著書について2回に分けて見てきました。そこで例によってドラッカーの視点から少し検討してみます。
ドラッカー企業の使命(ミッション)を考える場合には「顧客は何を買うか」を考えることが重要であると指摘しています。

そして、自動車業界を例としてあげて、富裕層がリンカーン・コンチネンタルを購入するのは移動手段を買っているのか、ステータスを買っているのかという視点で考えることを上げています。

ステータスの購入という視点からみるとミンクやダイヤモンドがライバルになるわけです。

現在からみるとステータスの象徴が移ろいやすいものであることがよくわかりますね。
時代に合わせて常に事業の再定義が必要になるということです。

本書は現在の経営状況について書かれたものですが、考え方の底流でドラッカー理論を継承していることが分かります。

当社がドラッカー経営という場合、この底流の考え方を重んじてます。

ドラッカー理論をベースに現代の経営書を読み解くと、経営を総合的に考えることができるので実際に経営現場に活用しやすくなるわけです。