小企業においてもトップマネジメントの仕事は大企業以上に明確に行わねばならないとドラッカーは言います。
会社のミッション・ビジョン・ゴールの設定と実行(いわゆる『戦略計画』の作成・実行)以外のトップマネジメントの主な仕事は以下のとおりであるといいます。
・組織を作り上げ、それを維持する役割‥明日のための人材を育成すること、トップの価値観を示し組織の基準とすること、組織構造を設計すること
・渉外の役割‥顧客、取引先、金融機関、政府機関などとの関係を取り結ぶこと。
・儀礼的役割‥規模の小さい企業ほど逃れることのできない時間のかかる仕事となる。
・重大な危険に際して自ら出動する役割
あらゆる組織においてトップマネジメントの機能が必要です。その具体的な仕事内容は組織によって異なります。それを具体的に決める基準が次のようなものです。
組織の成功と存続に致命的に重要な役割を持ち、かつトップマネジメントだけが行いうる仕事は何かである。 (『エッセンシャル版 マネジメント』p.225)
またトップマネジメントの役割をこなすために、少なくとも4種類の性格が必要となるといいます。
それは「考える人」「行動する人」「人間的な人」「表に立つ人」です。ドラッカーはこの4つをすべて持つ人間はいないと指摘するのです。
したがってトップマネジメントの役割は分担される必要があるというわけです。
零細・小企業の難しさの一つは、トップマネジメントにある人間が4つの性格をすべてそろえることが困難であることでしょう。
本来はせいぜい一つの性格を体現するのが精一杯のところを、その他の性格については弱点にならない程度に補う必要があるということでしょう。
トップマネジメントの役割について、よくリーダーシップという言葉でくくられがちです。
しかし、ドラッカーは「リーダーシップとは仕事である」と表現しています。
つまり、リーダーシップというものが、立派な見かけと話し方を身につけ颯爽と振る舞い、部下を人格的に圧倒して率いていくというものではなく、具体的な行動であるということです。
トップマネジメントは豪華なデスクの前にじっとすわっているのが仕事なのではなく、そのなすべきことを具体的に実行しなければならないということです。
小企業の場合、トップといえども現場の仕事にかかわる場合も多いでしょう。しかし、トップ本来の仕事は別にあるわけです。それを果たすことこそが優先されるべきでしょう。