2010年1月4日月曜日
書評 「選ばれるプロフェッショナル」
本書は自身がプロフェッショナルであると思う人にとっては必読書であると思います。
私もプロフェッショナルのはしくれと思っていますから興味深く読みました。
ドラッカー経営の観点からいうと、特に本書で重視されている統合力の説明に非常に感銘を受けました。
著者たちはプロフェショナルの問題解決能力の本質は「統合力」にあるといいます。そしてエキスパートであるよりゼネラリストこそが上級のプロフェッショナルであると断言しています。
私は統合力に注目した最初の人物はドラッカーではないかと考えています。
彼は、分析するだけではなく、再度目的や目指す成果に照らし合わせて統合することがとても重要であると指摘しているのです。
ドラッカーはこの統合力の重要性についてさまざまな著書で再論しています。
また、この統合力についてはコア・コンピタンス経営の著者であるハメル&プラハラードも指摘しています。
彼らはコア・コンピタンスを生み出す知恵はゼネラリストのものであると述べているのです。
本書と同様の視点であると言えるでしょう。
本書は専門家が勘違いしてはならないのは、「専門知識の量が多い=専門家」ではないと主張しています。
それではエキスパートにすぎないというわけです。エキスパートは過去にあった問題を解決することはできますが、新たな問題は解決するのが苦手ということになります。
現代では先端の専門知識といえども数年以内に陳腐化します。では何が重要かというと専門知識を生かしきる「統合力」であるということになるわけです。
単なる専門家はエキスパートに過ぎず、高い問題解決力を有するのはゼネラリストであるというわけです。
確かに最近ではネットやデータベースでそれまで専門家が独占していた知識が簡単に入手可能になっています。
本書によって日常業務を通じてうすうす感じていたことをはっきり教えてもらったように思います。
他分野の知識を統合するためには非常に多面的な知識が必要です。
一見何の役にも立たなさそうなことを熱心にやっているとそれが生きるかもしれないというわけです。
本書でも、文学部や芸術系の学校出身でありながたビジネスシーンにおいて一流のプロフェッショナルとなった人が意外と多い点が指摘されています。
私はドラッカーの大きな貢献の一つが統合力に注目したことであると思っていますが、本書はその統合力をより具体的に説明しているため非常に有益なものであると思います。
説明が短すぎてよくわからなかったかもしれませんが、今後、折に触れて統合力について検討していきたいと思います。