楠木氏は、良い戦略とはストーリーで表すことができるものであるという視点を提起しました。
これは、従来のシナリオ的な戦略論とはまた違ったものです。
ストーリーとしての競争戦略論は、「違い」と「つながり」という二つの戦略の本質のうち、後者に軸足を置いています。
‥‥
ストーリーとしての競争戦略は、さまざまな打ち手を互いに結び付け、顧客へのユニークな価値提供とその結果として生まれる利益に向かって駆動していく論理に注目します。
これだけでも、結構期待できます。いい展開が予感されます。
戦略をストーリーで語るということは、個別の要素がなぜ齟齬なく連動し、全体としてなぜ事業を駆動するのかを説明するということです。
私は戦略というものの説明をどのように行うべきかを悩み、ドラッカー理論の構造を成果の3つの領域とそれを支える生産性、さらには資源としてのヒトモノカネという土台、という図式化を思い立ちました。
問題なのは、それを具体化する戦略作成作法でした。
楠木氏の立論は、その課題に相当明確に答えるものでした。
(浅沼 宏和)