2011年2月9日水曜日

マーケティングとイノベーションの意味①

最近、マーケティングとイノベーションの定義について質問を受けたので、改めて整理しておきたいと思います。

ドラッカーの用語は、広い意味で使われていたり、逆にごくせまい意味で使われたりします。

ですから場合に応じて読み分ける必要があります。
しかし、ドラッカー理論の全体像を把握する点からは初期の代表作『現代の経営』(1954年)の記述が重要です。

主要な個所を抜き書きして解説します。


まずはマーケティングの意味です。


企業の目的が顧客の創造であることから、企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。
この二つの機能こそ起業家的機能である。


‥当時のマーケティングについての典型的な考えは、「工場が生産したものを販売すること」だった。
今日では、それが「市場が必要とするものを生産すること」に変わりつつある。


マーケティングは企業にとってあまりに基本的な活動である。
‥‥マーケティングは販売よりもはるかに大きな活動である。
それは専門化されるべき活動ではなく、全事業にかかわる活動である。
まさにマーケティングは事業の最終成果、すなわち顧客の観点からみた全事業である。


以上の内容には次の要素が読み取れます。


マーケティングは最終目的「顧客の創造」にかかわる基本的機能である。

マーケティングは市場の視点に立つ活動である。

マーケティングは全社活動である。

企業のマーケティング事業部の「マーケティング」概念は、ドラッカー理論では「販売」に当たる場合が多い。


その後の1964年の『創造する経営者』では、成果は市場・顧客、商品・サービス、流通チャネルの3つの領域のバランスによって実現されると書かれています。

そこで私はドラッカーのマーケティングの概念を

現在の視点から成果の3領域(市場顧客・商品サービス・流通チャネル)のバランスを取る全社的活動

と理解して再定義したわけです。

つまりマーケティングとは全社的な経営戦略であることになります。

マーケティングを全社的経営戦略ととらえる視点からは、その後、マーケティング理論の大御所のフィリップ・コトラーが体系化しています。

ドラッカーはコトラーに先駆けて極めて現代的なマーケティングの定義を行ったわけです。



(浅沼宏和)