次に同じく『現代の経営』を元にしてドラッカーのイノベーションの意味を考えてみます。
マーケティングだけでは企業は成立しえない。静的な経済の中では企業は存在しえない。
企業は発展する経済においてのみ存在しうる。
少なくとも変化が当然であり望ましいとされる経済においてのみ存在しうる。
企業とは、成長、拡大、変化のための機関である。
企業にとって、より大きなものに成長することは必ずしも必要ではない。
しかし、常により優れたものに成長する必要はある。
イノベーションは事業のあらゆる局面で行われる。
‥したがってイノベーションもまた、マーケティングと同じように独立した機能と考えてはならない。
イノベーションは、技術や研究に限定されるものではなく、事業のあらゆる部門、機能、活動にかかわるものである。
‥顧客の欲求を満足させる新しい方法を生み出し、価値のコンセプトを変え、より大きな満足を可能とするイノベーションの可能性である。
以上からイノベーションの要素をまとめると
イノベーションも最終目的「顧客の創造」にかかわる基本的機能である。
イノベーションは企業の変化や未来にかかわる活動である。
イノベーションは全社的活動である。
イノベーションは新たな顧客満足にかかわるものである。
ということになります。
私はそこからイノベーションについて、マーケティングの説明と同様に
イノベーションとは、未来の視点から成果の3領域(市場顧客・商品サービス・流通チャネル)のバランスを取ろうとする全社的活動である。
と再定義したわけです。
ドラッカーは、その後、マーケティングについて独立した著作は書きませんでした。
しかし、イノベーションについては『イノベーションと起業家精神』として体系的にまとめました。
つまり、現在の視点より未来からの視点のほうを重視したということができると思います。
経営用語は論者によって違った意味で使われますが、ドラッカー理論はもはやデファクト・スタンダード化しつつあります。ですからドラッカー的意味での理解もしておく必要があるでしょう。
(浅沼 宏和)