深田和範氏のマネジメント信仰批判の概要は次のようなものです。
マネジメントが下手だから会社が傾くのではない。
マネジメントなんかに頼ろうとするから会社が傾くのである。
本業で稼げない時に人事制度や情報システムを精緻化させて何の意味があるのか。
どんなに見栄えの良い事業計画を作っても、経営者に「意思」がなければ机上の空論である。
深田氏の意見はドラッカー本来のマネジメント論と合致しています。
しかし、深田氏はドラッカーのマネジメント論を実行しようとすると上記のような状態に陥ると考えています。
それはここでいったん置いておいて、深田氏の著書の内容をまとめていきます。
・経営者やホワイトカラーが社内のマネジメントばかりにこだわって企業の本質であるビジネスをおろそかにしているために業績悪化に拍車がかかっている。
・以前の日本企業は、マネジメントではなくビジネスを必死に追求していた。
・ビジネスが付加価値を生み出すことができない状態に落ち込んでしまえば、どんなマネジメントを行ったところでムダである。
・マネジメントがビジネスをダメにしている現状
症状① 意見はあっても意思はなし
・ビジネスには行う者の意思が必要。意思がなければ人間は行動を起こさない。
・「真似ジメント」の弊害。最近、マネジメント本に書いてあることをそのままマネする会社が多い。
症状② 都合のよいことばかり考える
・雰囲気で方向性が決まる。一度決まるとその方向性に沿うようなことばかり考える。
・反対意見がでることを嫌う。
症状③ 管理はするけど無責任
・何事においても内容より形式が重視される。
・形式的なことや目立つことはするが当たり前のことはできなくなる。
症状④顧客よりも組織を重視する
・経営理念・会社方針・ビジョンにこだわり、それが現実の会社の姿や日常業務とかい離していく。
・社員の考え方が幼稚になる。
以上を前提とした深田氏の主張は次の通りです。
★ 経験と勘と度胸を重視せよ
・2000年代になるまで日本ではマネジメント手法はあまり広まっていなかった。成功者の多くは成功の秘訣を「自分の経験・勘・度胸」といっている。今は物事を難しく考えすぎているのではないか。
・経験・勘・度胸でビジネスをすることは決して悪いことではない。あてにならない計画よりよほど役に立つ。
・勘と度胸を伸ばすには「新しい仕事を担当させる」のがよい。
・経験・勘・度胸が伸びてきたら、それにもとづいて自らの意思を積極的に示したり、主体的に選択するようにする。
・ビジネスを進める上では変わり者扱いされるぐらいの「こだわり」が必要。これが成功の秘訣。
★ 他人を変えるより自分が変われ
・他人はコントロールできない。自分が変わらなければ何も変わらない。
・マネジメント理論や手法で会社や社員を変えられると思ったら大間違い。
・もはやV字回復でも足りない。X字回復を目指せ。
・X字回復とは、頭打ちとなった既存事業とは別に新規事業の柱を作ること。
というのが深田氏のマネジメント信仰への批判の骨子です。
(浅沼宏和)