続いて小宮氏はアメリカの解雇のルールについて説明します。
アメリカではブルーカラーは年功の短い順から解雇されるそうです。
能力の高い若い人は解雇されてもよそで務めることができますが、年配の人はいったん解雇されると再就職が難しくなります。
ブルーカラーの場合、年齢が進むと体力が追い付かず能力が落ちざるを得ないため年配者に配慮する仕組みとなっているのだそうです。
しかし、ホワイトカラーの場合、そうした配慮はないそうです。
ルールは単純で、能力の低い人から解雇されます。
ホワイトカラーは年齢が進むと能力が落ちるというタイプの仕事ではないため、年功があるのに能力が向上していない場合には勉強や研さんを怠ったものと判断できるということのようです。
そして小宮氏は一流の社員が育つ条件として経営者が一流であることをあげます。
「二流の経営者のもとでは一流の部下は育たない」という命題が成立するというのです。
社員の力量の上限が経営者の格で決まるというのは経営者にとっては厳しい命題であるといえます。
また社内に実力のない上司がいると部下はつぶされるといいます。実力のない人間ほど下をつぶそうとするというわけです。これは非常に多くの事例をみかけます。
実力のない人間は自分の仕事を秘密にして、そのノウハウを公開しないことで権威を保とうとします。
実質的な能力以上に自分を大きく見せることに全力を注ぐわけです。また少しでも優秀な人間をみると社外に追い出そうとするというわけです。
ドラッカーは現代のビジネスパーソンについて、知識労働者、プロフェッショナル、チェンジリーダー、イノベーター、テクノロジスト‥‥と多様な概念を駆使して説明しています。
これら細かい区分は別として、共通する性格はいずれも成果に焦点を合わせていることです。
また成果を上げる能力を身につける責任は本人にあるとされています。つまり自分自身でレベルを引き上げていかなければならないということです。
小宮氏の指摘するホワイトカラーの厳しい現実はドラッカーのこの指摘を説明するものととらえられます。
(つづく)