小宮氏は不景気、低成長の時代であっても、勉強を積み重ね、工夫し、努力し、世の中で自分を生かすための道を探り知恵を出していくことで成長し成功することができるといいます。
またIT化の進んだ現代は知恵の時代となったといいます。
この点について、私も思い当たることがあります。
私の仕事のうち税理士業務の根幹にあるのは税法解釈です。
かつてこの仕事の質の高さはほぼ経験年数に比例していました。
なぜなら、天井まで届くほどの法令集から必要な情報を引っ張ってくるには膨大な量の経験が必要であったからです。
解釈以前に必要な資料を探し出すために何時間も、場合によっては何日もかかったりしていたわけです。
ところが2000年前後から判例や条文のデータベースが整ってきました。ですからかつては年季が物を言った情報収集が簡単にできるようになってしまったのです。
その時点から「年季」という概念は意味をなさなくなりました。深い思考力だけが物を言うようになったわけです。
法学系の出身者が大幅に有利になりましたし、法学系ではなくても論理的な思考に秀でた人は以前より早く頭角を現せるような土壌になったと思います。
また資料が簡単に入手できる以上、より高度な判断ができるように研さんを積まなければすぐにとり残されて行ってしまう危険も高まったわけです。簡単な税法知識は顧客の側でも入手できるようになっていますし。
こうした事情はあらゆる業界にあると思います。
小宮氏はこうした時代状況にあって、これから伸びることができるのは「業種」でもなければ「業界」でもないといいます。それぞれの会社や個人が伸びる時代になったというわけです。
これからの時代に大切なのは「知恵を出す」ことであり、知恵とは企業でいえば企業戦略であるということなのです。それが企業を生かす道であると指摘しています。
当たり障りのない思考しかできなければすぐに淘汰されてしまう厳しい時代になったといえるでしょう。
ドラッカーは、現代の仕事の多くは知識労働であると述べていますが、上記の話はこれを裏付けるものであると思います。
(つづく)