野球部の定義と目標も決まったので、みなみは次の課題に取り組んだ。
「企業の目的は顧客の創造である。‥企業は二つだけの基本的機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。その二つだけが成果をもたらす。」
「マーケティングは顧客からスタートする。‥『われわれは何を売りたいか』ではなく『顧客は何を買いたいか』を問う。」
そこでみなみは「野球部を甲子園に連れていく」という自分の欲求を言うのではなく、野球部のメンバーなどに対してマーケティングを行っていった。
将来起業家となるべく心身を鍛練し人脈を築く目的の部員、自分の実力を確かめたいだけで責任を負うのが重荷のキャプテン、打撃成績最低であるためレギュラーであることに悩む部員、野球が面白くなくて悩む部員、監督が嫌いでふてくされているピッチャー‥といったことが明らかになった。
「マネジメントは生産的な仕事を通じて働く人たちに成果をあげさせなければならない。」
みなみは野球部員たちにどうやったら成果を上げさせることができるか考えた。
「焦点は仕事に合わせなければならない。‥仕事がまず第一である。」
「働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには①生産的な仕事 ②フィードバック情報 ③継続学習 が不可欠である。」
これにもとづいてみなみはマネジャーの仕事の設計を行った。
成果に焦点を合わせて仕事を設計するというのはドラッカー流の組織構築の基本です。
そのためにマーケティングが必要であるという組み立ては「非営利組織の経営」の実践そのものです。
ドラッカーは非営利組織であっても成果を上げなければ存続できないし、したがって社会的意義を持ちえないと考えていました。
(つづく)