みなみは次に社会の問題に取り組もうと思った。
成果を上げ始めた野球部のノウハウを他のクラブ活動にも提供しようと思ったのである。これはコンサルティングに他ならなかった。
陸上部では各部員への責任を分け与えることで出席率を上げた。
柔道部ではチーム制練習の導入で体力測定の数値を上げた。
家庭科部ではフィードバックの仕組みを構築することで料理のレベルが向上した。
吹奏楽部では各人の強みを生かす編成に変え、みんなを生き生きさせた。
さらに学校の問題児たちをマネージャーとして野球部に入部させるということで学校の問題解決に貢献した。
またみなみがコンサルティングを行った他のクラブと野球部が合同練習することでさらにレベルを引き上げることにも成功した。
これはみなみとは別のマネージャーの提案であった。みなみは彼の「新しい試み」の良しあしを判断することはしなかった。
「あらゆる組織がことなかれ主義の誘惑にさらされる。だが、組織の健全さとは高度の基準の要求である。
‥‥成果とは百発百中のことではない。‥成果とは打率である。
‥‥人は優れているほど多くの間違いを犯す。優れているほど新しいことを試みる。」
みなみはこの原則に従ったのであった。
またみなみはむやみな部員の募集を控えるようにした。
「規模の不適切さはトップマネジメントの直面する問題のうち最も困難である。」
「真摯さを絶対視して初めてまともな組織といえる。」
だから入部希望者には十分な話し合いを行うこととした。
そして最後にみなみは「集中の目標」の決定に取り組んだ。
「集中の目標は基本中の基本というべき重大な意思決定である。」
その結果、二つの目標が決まった。
1、ボール球を捨てストライクだけを打つ。
そのためにボール球を見送る練習だけに集中した。
2、エラーを恐れない
「ノーボール作戦」は全球ストライク勝負なので、打ち返される可能性が高くなり守備の負担がふえる。エラーは避けられないが問題は浮足立つことであると分析した。だからエラーを恐れないことを最も重視した。
こうした独創的な戦術と集中の目標を駆使してみなみの高校は地方大会を勝ち上がり甲子園出場を決めたのであった。
とまあ、こんなお話でした。