日経ビジネス2011.5.30号では事業継続対応策についての特集が組まれていました。
事例1:日本コカコーラ 「リスクは毎年洗いなおす」
・シナリオは想定にすぎないので、細かな決まり事より対応力を磨くことが大事。
・全社リスクを毎年洗いだし、対応策を追加していく。
・リスクは発生可能性と影響度をそれぞれ5段階評価し、脆弱と判断されたら対策計画・責任者・期限を決める。
事例2:富士通 「年200回の訓練」
・災害や事故の対応・行動計画を決め、グループ全体で年に200回の訓練を実施する。
・想定外の事態が起こりうると考えて、人の力や現場の力でカバーできるような訓練プログラムを実施している。
・事業継続能力の要素を「ハード=予防・減災対策」「ソフト=行動計画」「スキル=対応能力」
事例3:今野製作所 「1枚の紙で復旧計画」
・SCOR(サプライ・チェーン・オペレーション・リファレンス・モデル)と呼ばれる業務プロセスの記述書によって受注生産工程をみえる化する。
・SCORでは、計画、購買・調達、製造、配送、返品の5つに分ける。それぞれの中身はD1(見込み生産品の配送)、D2(受注生産品の配送)、D3(受注設計生産品の配送)に分類。
・SCORチャートを震災でダメージを受けた工場の復旧手順の検討に利用。
・中小企業には綿密な計画は不要。自社の規模や業種に合った独自の手法でやればよい。
他にも2つの事例がありましたが、各社各様です。
しかし、共通して言えることは大災害の時は事前の理屈どおりにいくとは限らないので、その時その時の柔軟な行動が大切であるということです。
それについて、次のような記事がヤフーに掲載されていました。
避難開始まで40分=保護者に説明会―児童74人死亡不明の大川小・宮城
東日本大震災の津波で在籍児童74人が死亡、行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校は4日夜、同市内で、震災後2回目の保護者説明会を開いた。避難の経緯を調査した市教育委員会は、地震から避難開始まで約40分かかったことを明らかにした。
大川小学校は、地域の避難場所に指定されていたことと、集まってくる住民や保護者とのやり取りや点子等の手順をマニュアル通りにやっているうちに時間が経ってしまい、津波に多くの児童が飲み込まれるという悲惨な結果になってしまったわけです。
特に大きな組織や行政で見受けられる問題点だと思いますが、本来の目的ではなく「決められた手順は何か」という本末転倒なことに注意が向いてしまうということです。
ドラッカーの意思決定論では、「意思決定の際に明確化した必要条件は何か?」を重視することになっています。必要条件が満たされない場合には意思決定の内容を改定する必要があるということです。
この場合、「大川小が安全な程度の震災であるならば」マニュアル通りでよかったわけです。
津波警報がスピーカーで地域に流されていた状況でマニュアル通りにこだわった対応は失策であったといわざるをえません。
(浅沼 宏和)