ミンツバーグは血の通った戦略論を目指しているように思います。
強みと弱みを分析して計画的に作り上げる戦略はあまり血が通っていないと考えています。
形は美しいが実行が難しいというたぐいの計画です。
以下、ミンツバーグの論文の抜粋です。
・戦略プランニング(1960年代に脚光を浴びた)は今なお健在だが、もはやその土台は崩壊している。
・戦略プランニングと戦略思考が異なることが理解されていない。
戦略プランニングが戦略思考を台無しにした結果、マネジャーたちはビジョンと数字合わせを混同している。
・戦略思考とは、マネジャーがあらゆる情報源から学んだことを検索し、そこで学びとったものをビジネスの方向性に沿った形でビジョンへ統合させること。
・戦略策定の誤ったイメージは、午前中にミッションに関するプレゼン、午後には自社の強みと弱みに関する報告、夕方までには戦略の策定‥‥というもの。
戦略思考はこれと対照的に統合(インテグレーション)である。そこには直感と創造性が関係する。
・戦略プランニングの3つの誤り
誤り① 予測は可能である
・アンゾフは誤差プラスマイナス20%の精度での予測を重視するができるはずがない。
誤り② 戦略家は戦略課題とは別世界に存在できる
・効果的な戦略は偶然と熟慮の両方の産物である。
・どんな戦略もある程度の柔軟な学習とある程度の体系的思考の組み合わせである。
誤り③ 戦略策定プロセスは定型化できる
・定型化とは分析・運用手続き・最終的な行動に至るまでを合理的・連続的に処理すること
・学習プロセスによる戦略策定はこれを逆のプロセスをたどることがある。
・定型化されたステップでは非連続的変化を予測したり、斬新な戦略を創造することは不可能。
・戦略を策定することは自己完結できるプロセスではない。戦略会議という名称を設けたからと言って戦略が策定できるわけではない。
・戦略策定は一つの組織を管理・運営するために必要なすべてが相互に絡み合うプロセスなのだ。
・戦略策定プロセスを恣意的に定型化するよりも、むしろより自由度を与えるべきだ。
ミンツバーグはこのように戦略策定を親しみやすいものにしようとしています。
また、戦略は現場との接点で生まれる視点から次のようにも述べています。
‥‥要するに、日常に存在する微細な事柄に無関心であってはならないのだ。
これには全く同感です。
当社の環境整備研修では、「オフィスの特定のエリアが急に乱れた場合、事業の状況が変化し、昨日までの仕事のやり方に何らかの不適合が発生した可能性を疑う必要がある」と教えます。
ミンツバーグもやはりわずかな異常や変化を見落とさず、それを手掛かりに戦略を形作る視点を持っているようです。
当社では 環境整備は戦略に従う という命題を提唱していますが、ここからすると
環境整備は戦略を生み出す ということも言えそうです。
それぞれ違う局面についての表現ということになります。
この仮説はさらに検討していきたいと思います。