前回はハインリッヒの法則から「何もないことは大問題」という命題が導かれた話をしました。
今回は、その逆バージョンです。
ドラッカーは 『強みは予期せぬ成功によって知ることができる』 と述べています。
そこから「何もないことは大問題」は、良い結果が出ないことにも言えるのではないかと考えました。
なぜ予期せぬ出来事(思わぬ良い結果)が起きないのか、つまり「成果」が得られないのか?
この「成果」という言葉をハインリッヒの法則の「事故」と置き換えることができるのではないかと考えました。
それを表現すると次のようになります。
1つの大成果の後ろでは29の小さな成果があり、さらにその背景には300件のちょっとした工夫・打ち手が存在する。
たとえば営業の場合を考えてみます。
大きな契約が1件とれた場合を大成果とします。
すると契約が取れなければ成果が上がっていないのでしょうか?それは違うと思います。例をあげましょう。
・今まで門前払いだった相手の担当者が話を聞いてくれるようになった。
・話は聞いてくれていたがそっけなかったのに、最近では笑顔で色々話をしてくれるようになった。
・役職がより上位の人が話をしてくれるようになった。
・相手からかかってくる電話が増えた。
といった状況変化があれば、それは「小さな成果」と考えてよいと思います。
どの程度を成果と見るかについては見解は分かれるでしょうが、打ち手の数より小さな成果の数はより少なくなり、大成果はさらにそれよりはるかに少なくなるという論理は否定できないはずです。
小さな変化を起こすためには、ほんのちょっとした気遣いや打ち手を数限りなく打つ必要があります。
当たり前のことを当たり前のレベルでしかやらなければ小さな成果すら生み出せないでしょう。
小さな打ち手の数を増やすことはいくらでも工夫の余地があります。小さな打ち手をたくさん打っているかは本人にしかわかりません。
ですが、それは現象としては「小さな成果」の発生、つまり予期せぬ(良い)出来事が起きていることで外からも確認できます。
すると『できるビジネスパーソン』は次のような人であることになります。
できるビジネスパーソンとは、ときどき大きな成果を上げ、
継続的に小さな成果を上げ、日常的には小さな打ち手と工夫を積み重ねる人である。
成果と打ち手の関係がはたして1:29:300になるかはわかりませんが、おそらく良いことも悪いことも兆候と結果の関係という意味ではそんなにかわらないと推測しています。