2010年11月30日火曜日

意思決定-ケネディの場合

現在、『経営者の条件』を読み直しています。

その中の意思決定の部分は、いわゆる戦略的意思決定に焦点を絞って詳しく説明がなされています。

事例としてアメリカの政治家を取り上げることが多いのですが、それがそのまま現在の日本の政治に当てはまるように思えます。

ドラッカーはケネディ政権の政策はほとんど失敗したと指摘します。

閣僚の優秀さにもかかわらず、ケネディが成功したのはキューバのミサイル危機への対処についてだけであって、その他については全く何もできなかったといいます。


ドラッカーによるとその原因は、ケネディ「原則や方針を策定せず、あらゆる問題をその都度解決することにこだわった」ためであるといいます。


ここからドラッカーの次の原則の重要性が浮かび上がります。


真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本の理解に基づく解決策を必要とする。

原則、方針、基本による解決を必要とする。

‥多く見られる間違いは一般的な問題を例外的な問題の連続としてみることである。

‥解決についての基本を欠くために、その場しのぎで処理する。結果は常に失敗と不毛である。

            『経営者の条件』より


現在の民主党政権で失敗が連続して起きているのは、菅内閣がケネディーと同じ過ちを犯しているためのように思われます。

2010年11月27日土曜日

◇年末セミナーのご案内 「経営者のためのドラッカー講座」

当社恒例の年末無料セミナーのお知らせです。




-『もしドラ』から一歩先に進みたい-

  経営者のためのドラッカー講座




日時: 12月8日(水) 18:45-20:15
場所: アクトシティ浜松コングレスセンター53・54会議室
料金: 無 料


今年はP.F.ドラッカーがブームとなった年でした。

そこで2010年を締めくくるにあたり、ドラッカーの入門編を企画いたしました。

「もしドラ」を読んでドラッカーに興味をもたれた方、これまでドラッカーを学ぶ機会のなかった方のご参加をお待ちしております。


テーマ1: ドラッカーはどんな人物か?


   
ドラッカーの略歴
なぜドラッカーは重要なのか?
ドラッカーの本のどれを読めばいいのか?



テーマ2: ドラッカーの経営戦略論


 
事業の目的とは何か? -マーケティングとイノベーション-
戦略計画とは何か?
『浅沼方式ドラッカー戦略マップ』の提案



テーマ3: ドラッカーの仕事論

プロフェッショナルとは何か? -ビジネスパーソンの心構え-
成果を上げる5つの視点



*セミナー終了後には近くの居酒屋で気軽な懇親会を予定しています。ご希望の方はぜひご参加ください。(3千円以内)

*参加希望者はメールにて当社までお知らせください。 info@tma-cs.jp

*詳細は当社HPをごらんください。

閑話休題-ノーベル賞受賞者の名言

ビジネスワンポイントに書かれていた名言をご紹介します。


・基礎的な能力を持ち正しく夢を持って50年追い続ければ夢は実現する。 ‥根岸英一                               

・一日生きることは一歩進むことでありたい。  ‥湯川秀樹

・勇気とは窮地に陥った時に見せる気品のことである。  ‥ヘミングウェイ


・常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクション。
 知性は方法・道具に対しては鋭い観察眼を持っているが、目的・価値については盲目。
                               ‥アインシュタイン

・人類の大半が愚かであると考えると広く受け入れられている意見はばかげている可能性が高い。
                               ‥バートランド・ラッセル

・人間は理由もなしに生きていくことはできない。 ‥カミュ

・自分を本当に納得させることができれば人を納得させることは簡単。 ‥利根川進

・決して誤ることがない者は何事もなさない者だけである。 ‥ロマン・ロラン

・幸福になる秘訣は努力そのものに快楽を見つけることである。 
 幸福になる必要がないと思い始めた日から私は幸福を感じるようになった。
 目が見える人間は見えることがいかに幸せかをほとんど感じずに生きていく。
                                  ‥アンドレ・ジッド

2010年11月26日金曜日

エグゼクティブとは?

今日の組織では、自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである。

‥知識労働者は意思決定をしなければならない。
‥自らの貢献について責任を負わねばならない。

                       『経営者の条件』より


なかなか難しい文章ですね。

エグゼクティブとは今風に考えるならば、レベルの高いビジネスパーソンといった感じでしょうか。

エグゼクティブは自身の責任においてものごとを判断しなければならないというわけです。

ドラッカーはこのようにも言っています。


ゲリラ戦では全員がエグゼクティブである。


ジャングルで敵と遭遇しても司令部に指示を仰ぐことはできません。

その場で高度な判断を迫られることになるわけです。しかも、その責任の取り方は自身の命をかけるというものですから、特殊部隊の隊員等は全員エグゼクティブになるわけです。



ドラッカーは医療チームもエグゼクティブの集団であると考えています。

医療現場では医師や看護師のほかにもさまざまな職種のプロフェッショナル達がいます。

1人の患者に対して実に多くのプロがかかわるわけですが、彼らは具体的な細かい手順まで相互に伝えあっているわけではありません。

「患者さんを治す」という共通のミッションのもとに治療計画を理解し、それぞれが責任を果たすために最高の仕事を行います。

彼らは責任に基づいて行動するわけで

ですから、患者さんの治療に失敗したとしても「患者さんは死んでしまったけど、私の仕事は最高だった。」というわけにはいきません。

しかし、ビジネスシーンではこういった話がよく出ます。

ドラッカーはこのような人を『二番目の石工』と呼んでいます。

2010年11月25日木曜日

成果を上げる者

成果をあげることはエグゼクティブの仕事である。

‥エグゼクティブは常になすべきことをなすことを期待される。

すなわち成果を上げることを期待される。




‥頭の良い者がしばしばあきれるほど成果をあげられない。

彼らは頭の良さがそのまま成果に結び付くわけではないことを知らない。

頭の良さが成果に結び付くのは体系的な作業を通じてのみである。


                『経営者の条件』より


ドラッカーの成果を上げることについての記述です。

ドラッカーは成果を上げるには5つの基礎能力が必要であると述べています。

そして、その5つを身につけることは習慣の問題であり、頭の良さとは無関係であると考えています。

その5つとは次のようなものでした。

①タイムマネジメント
②貢献を考える
③強みを生かす
④集中する
⑤意思決定する

こうして並べると少しわかりにくいところがありますね。

色々なドラッカー本が最近でていますが、この5つの関係をすっきり説明できている本はまだありません。

当社の年末セミナーではこの5つの関係を簡単に図式化してご紹介しようと思っていますが、まだうまい具合にいっていません。

当日ぎりぎりまで内容を詰めたいと思っています。

2010年11月24日水曜日

卓越性の概念

卓越性だけが利益をもたらす。

    『創造する経営者』より


ドラッカーの重要な概念に卓越性があります。

卓越性とは、一言でいえばものすごく優れているという意味です。


この卓越性について誤解しやすいのは、一芸にさえ秀でていればよいと勘違いしてしまうことです。


ドラッカーは、弱みにこだわらず強みに集中せよとも言っていますので、これが言い訳に使われる危険があるのです。

別の記述を引用します。

多くの領域において卓越することはできない。
しかし、成功するには多くの領域において並み以上でなければならない。いくつかの領域において有能でなければならない。
一つの領域において卓越しなければならない。

        『創造する経営者』より


単純化すると

卓越分野1 : 有能な領域数個 : 並み以上の領域多数

というわけです。

前にこのブログで私はハインリッヒの法則から 大成果1:小成果29:積極的打ち手300
みたいな比率が成立するかもしれないという仮説を書きました。

これがドラッカーでは、卓越・有能・並み以上という概念に同じようにピラミッド型の階層構造が成立すると書かれているわけです。

この記述に気付いたのは昨日ですが、以前に読んだときには気づきませんでした。


ドラッカーの著作の特徴は読み返すごとにこうした発見があることです。

ちなみに私がここで書いていることは、どのドラッカー本にも出ていないと思います。

ドラッカーは読めば読むほどマネジメントについての自分なりの基準や原則が頭に浮かぶようになっています


さて、ドラッカーの卓越性の法則(私の勝手なネーミングです)によると、私の法則は次のように書いた方がいいのかもしれません。


大成果1つに対してその数倍から数十倍の小成果があがり、その背景には数限りない積極的な打ち手が存在する。

打ち手は自身の努力で実行できる。卓越するビジネスパーソンは打ち手の数が限界的ビジネスパーソンを大きく上回る。

2010年11月23日火曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」⑥

だいぶ長く連載しましたが今回でおしまいです。


・本当の意味で粘り強い人は精神的・肉体的にどんなに疲労しても絶対に屈しない。猛烈な努力をすることによって成功することを予期している。彼らは常に真剣勝負を挑む。


・人はみな時に失敗する。失敗が本当に悪いものとなるのは、それをあきらめる口実に使うときだけ。


・逆境に立ち向かう姿勢を持つ。逆境は自分を見つめなおす絶好の機会。


・あなたは自分の運を作り出している。あなたは自分の決定に基づいて自分に起こることを作り出している。


・絶対に負けないという強い意志を持つ。


・逆境のときこそ基本に立ち返ることが重要だ。


・自分のビジョンに自信を持つ。失敗の原因は、目標そのものが間違っているのではなく、単にやり方がまずいことが多い。


・どのような状況であれ誠実に行動する。自分がいつも評価されていることを自覚し、今日の失敗を明日につなげるようにしなければならない。

・人生に対処するには常に前向きでなければならない。それが正しい方法だからというのではなく、それが唯一の方法だから。

・どんな努力家でも「これで成功だ」と思ったとたん、怠け癖がついてしまう恐れがある。あなたの旅が終わることはない。

・仕事であれ私生活であれ、多くの人はひたむきに努力して業績を上げたとたん、坂道を転げ落ちるように衰退する傾向がある。


・なぜあの一流企業は衰退したのか?最大の理由は成功の美酒に酔いしれたから。


・あなたは自分と一年契約を結び、それを毎年更新する必要がある。それによって怠け癖を防止し、努力を継続し、最高の自分でいられる。

・何かを成し遂げたら記録する。そして何が効果的であったのか自問自答する。

・成功して努力をやめるなら成功は災いのもととなる。

・成功を収めても常に改善に努めなければ生き残れない。


以上で、本書のまとめはおしまいです。

内容的にはまるでドラッカーの『経営者の条件』ですね。

スポーツマンが『経営者の条件』を書きなおしたような印象を受けました。

2010年11月21日日曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」⑤

つづきです。


・あなたはプレッシャーのかかる状況を乗り越えた子供時代のチャレンジ精神を取り戻す必要がある。

・心に疑念が生じないように万全の準備をする。

・ストレスを最小にする7つの方法

①物事を広い視野でみる
②規律に従う
③今日のプレッシャーに立ち向かうことに集中する
④大きな課題を細分化する
⑤ネガティブな人間に振り回されない
⑥実行に費やす時間を増やし、不平に費やす時間を減らす
⑦プレッシャーを有効に使い、能力を発揮する

・プレッシャーに対処する方法は、自分の課題を整理して優先順位を付け、時間を有効に活用すること。

・偉大な選手は才能と練習によって成功できることを知っている。最高のパフォーマンスができるように毎日、自分にプレッシャーをかけて勝つ訓練をしている。

・失敗への恐怖を利用すれば大きな力を発揮できる。自分にプレッシャーをかけることはあらゆる状況で有効だ。

・成否を分けるのは「粘り強さ」だ。

・粘り強さとは「絶対にあきらめないこと、不屈の精神で絶えること、何があっても継続すること」

・成功者に共通する特徴。年間を通じて「新年の抱負」に取り組むこと。これこそ粘り強い人が実行していること。




書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」④

続きです。


・コミュニケーションの技術とは、人に適切に接して自分の目標の達成を手伝ってもらうと同時に、その人たちの目標達成を手伝うこと。

・あなたの目標は、自分がいつも正しいことではなく、双方が勝つようにすること。

・単に命令するのではなく、ほんの数秒間理由を説明するだけで相手の心理に天と地の違いが生じる。

・本当に重要なのは、相手の成功を手伝いたいという誠実な気持ちを強調すること。


・全体の利益とは何かを理解させる。個人の目標の一部を犠牲にしなければ全体の利益は得られない。

・職場での問題解決は、敵対的になるのではなく、状況を分析し、気がかりなので解決したいということ。


・「練習すれば完璧になる」という格言は不正確。完璧な練習によってはじめて完璧になる。

・偉人達が非凡な業績を上げたのは、運命や神の思し召しではなく、非凡な規律に従ったから。

・賞賛するなら誰でもできる。成功の秘訣はロールモデルを研究して長所を取り入れること。


・自分流を作り上げる。見習うべきロールモデルを絶えず探し求め、自分のやり方を常に改良する。

・成功に近道はない。ロールモデルを探すとき、安易な方法を使っている人を手本にしてはならない。


本書は、かなりドラッカー的な内容です。ドラッカー度80%以上ですね。

ただ、文体がスポーツで成果をあげた人特有の端的なものなので、ドラッカーに比べてかなりわかりやすい点がよいと思います。

2010年11月19日金曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」③

ここまでのまとめからしても本書はレベルが高いです。

著者のピティーノ氏がNBAでトップ中のトップである以上、当然といえば当然ですが。

スポーツ界の著名人は、例外なくNO.1を目指しています。ですからそこで結果を出している人はやはり違うところがあります。

しかし、ピティーノ氏の場合、その発言はそのままビジネス界で応用できるものばかりです。

ビジネス界の場合は、すべての人がNO.1を目指しているわけではないので、成果を上げる本質的な原則が見えにくくなっています。



・間違った習慣では向上しない。悪い習慣を繰り返せば、目的達成の障害になり、成功を収めることができなくなる。

・悪い習慣とは自分の利益にならない習慣。

・職場における悪い習慣
①注意力が散漫。 :私用電話、ダラダラして生産性を落とすなど
②開き直る  :反省しない
③時間通りに出勤する  :始業時間は本気モードに入る時間
④無駄話をする  :時間と労力の無駄
⑤私生活を職場に持ち込む。  :集中力を失う

・仕事のプロは集中力を乱さない。気分のむらがなく、いつも高いレベルで働くことができる。

・記憶に頼らず、すべてのことを書きとめる。

・もし、一日を充実させたいなら意思と規律が必要になる。毎日計画性を持ち、具体的な目標を設定しなければならない。

・すがすがしい気分で仕事をするコツ。後回しにしたくなることを真っ先にする。

・普段から体を鍛えておく。35歳以上の年齢になるとエネルギッシュに見えなくなる。そうではないことを自分で証明しなければならない。

・第一印象を良くする。身なりは自己イメージの表れ。人々がそれをもとにあなたを判断することを忘れてはならない。

・あなたが目指すべきことはすばらしい第一印象を持ってもらうこと。自身の個性を出すと同時に、規律に従っているという印象を与えるよう努力すべき。


・ぶっつけ本番では成功はおぼつかない。オフのときでも勉強して準備しておかなければならない。

・相手のことはよく知っておく。知らない人と仕事をするときは噂で判断するのではなく、綿密に調査しなければならない。

2010年11月18日木曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」②

仕事が立て込んでいたため、しばらく間が空いてしまいましたが書評の続きを書きます。


・努力こそが成功に不可欠な要素だが、短期的目標に向かって努力することは自分を強くするための訓練である。

・低い目標を達成して満足してはいけない。意欲的な人はかなり高いレベルにまで目標を上げ、それを達成する方法を確立する。

・精神力とは、楽しくないときでも全力を尽くすこと。


・ポジティブな姿勢を維持する。私たちはポジティブな姿勢を維持するように日ごろから自分を律しなければならない。

・自分の気分をコントロールする。私たちは朝起きた時に自分の気分を選ぶことができる。

・多くの逆境に直面すればするほど、ますますポジティブにならなければならない。


・ネガティブな人間の言動には警戒が必要だ。彼らは失敗体質なのだ。

・かかわるべきではない3種類の人
  ①職場で世間話をしたがる人
  ②午後は早退して遊びに誘う人
  ③あなたを仕事中毒と呼び、そんなに働かずにのんびりしようよという人

・真の友人であるならば、あなたの目標達成の邪魔になることはしない。

・変化はチャンスととらえる。ポジティブな人は変化を刺激的なものとみなし、自分の仕事を脅かすのではなく発展させる要因と考える。

・現在を大切に生きる。過去への後悔や未来への心配ではなく現在の課題に集中することは大きな恩恵をもたらすポジティブな態度。

2010年11月13日土曜日

閑話休題-中国事情

ご時勢がら中国への注目が集まっています。

当社の本拠地・浜松でも海外シフトの流れの中で中国のビジネス環境についての情報が入ってきます。

最近、当社社員が受講した中国ビジネスセミナーでの情報をまとめます。


・注目都市は大連。インフラが整備され、そのうち北京と3時間半で結ばれる。
・大連には日本語をしゃべれる人材が多い。日系企業への就職希望の若者が多い。

・中国はあくまで共産圏。すべては共産党次第。
・恥をかくことを嫌う国民性。自分のプライドを最重視している。

・「土産(みやげ)」の風習。意味は日本と同じだが、相手からの土産で自分の価値を知る。安価な土産は絶対にNG。
・日本に対して優越感情を持っている。日本は初戦敗戦国。中国の属国という意識。中華思想。

・中国は完全な男女平等。男尊女卑発言に注意。

・造られた半日でも。デモに参加するとお金がもらえる。
・80年代、90年代の若者には反日感情が少ない。
・反日番組いつもどこかの局でやっている。

・貧富の差が激しい。8億人が貧しく、1億人が富裕層。
・沿岸部と内陸部の格差が激しい。

・人件費が高騰中。沿岸部では軒並み10~30%上昇。
・富裕層でもプアーな消費。贅沢品は別として日用品は普通のものを使用。
・食の安全への意識は高まっており、日本のコメ10kgで3万円もする商品がよく売れている。

・大連は人口800万人。仙台より寒く、冬はマイナス20度ぐらい。
・大連には東北3省から人が集まってくる。

・大連の成長率は中国トップで15%以上。
・東北地区最大の不凍港がある。中国全体でも7番目。さらに巨大港を建設中。


・改革開放政策の最初も大連だった。


・中国人は情に厚いが、情を勝ち取るまでに時間とお金がかかる。
・拠点がないと信頼を得られない。

以上が、資料の概要です。



次にセミナーについてですが、募集30名のところ、参加申し込みが14名、実際参加者は10名でした。40-60代の男性中心で、ほとんどが経営者と思しき人たちです。

・GDP成長率10%を堅持する方向。人民元切り上げには時間がかかりそう。
・国営銀行の不良債権が増えている。原因は融資乱発。不名誉な話なので報道が少ない。
・日本企業の買収は今後も進みそう。

・オンラインビジネスは日本以上に発展している。日本企業が成功しているのは健康食品や化粧品など。

・中国から日本に送金するときの手数料が高い。香港の銀行を通すと比較的安い。
・社会保険料が高い。本人の手取り給料が1000元になるためには1700元の人件費がかかる。(会社負担500元・本人負担200元)

・治安が悪く、空き巣が多いため戸建て住宅の需要が少ない。マンションに住むのが基本。

・中国で法人を立ち上げるには専門業者に頼むべき。2-3カ月でできる。



ということです。

現在、中国に進出する計画はありませんが、ビジネス事情を知っておくことはますます重要になるでしょう。近い将来何らかのかかわりは出てくると考えています。

私は近年、2度上海に行きましたが上記の内容は半分以上知りませんでした。多面的な情報収集の必要性を感じました。

今年は、アジア圏の各国のビジネス事情をレクチャーしてくれるセミナーにも行く予定ですので、またまとめたいと思います。

2010年11月12日金曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」①

リック・ピティーノ 『成功をめざす人に知っておいてほしいこと』ディスカバートウェンティーワン、2010年  定価 1,470円


リック・ピティーノ氏はバスケットボールの名監督なのだそうですが、私は全く知りません。

しかし、本書の内容は素晴らしいものです。

ビジネスパーソンが成果を上げるのに非常に有益であるのはもちろんですが、ドラッカーの仕事論と非常に多くの部分が重なっています。

またイチロー語録とも近い内容で、それがさらにビジネスマン向きにアレンジされているといった印象です。

ともかく一読の価値はあります。内容が大変素晴らしいので、何回かに分けてご紹介します。


・低い自尊心はその人の成功を妨げる恐れがある。自尊心が低いと目標が定まらず、すぐ挫折する。
・自尊心が成功の土台となる。自信を取り戻すには強みを意識すること。

・自尊心の大部分は「自分が成功に値する」と確信できるかどうかに左右される。
・人のせいにしているうちは伸びない。業績のいい人は単に運がいいのではなく、ひたむきに努力している。
・努力が道を切り開く。いいわけは負け犬根性の表れ。

・批判されても信念を貫く。ただし、自身のやり方に問題があれば改善しなければならない。
・苦しい時に辛抱し、信念を貫くことが重要。

・間違った努力はしない。自分が得意なことで才能を発揮するのがよい。

・年をとるほど変化を求める必要がある。年をとるとやり方が固定し、それにこだわることに快適さを感じるようになる。そうするとリスクを取れなくなる。時代のニーズに応じて変化を遂げる以外に繁栄の道はない。

・自分は成功すると信じても、そのための努力をしていないなら、夢は永久に実現しない。自尊心は自分がそれに値すると確信できて初めて本物になる。

・夢を持つ人は平凡な人生で満足しない。しかし、ひたむきに努力して規律に従わなければどんな夢も空想にすぎない。

・夢は目指すべき理想であり、実現したい新生活。目標は、達成すべきことを明確に示す日々の青写真。

・長期的な成功は日々の小さな勝利が積み重なったものである。日々の成功を積み重ねることが重要。



2010年11月11日木曜日

週刊ダイヤモンド「みんなのドラッカー」②

日本の有名経営者たちのドラッカー評です。


山崎製パン・飯島延浩社長


・ドラッカーの5つの質問のうち、3つを重視している。
「私たちの使命は何か?」
「私たちの顧客はだれか?」
「私たちの顧客の求めるものは何か?」






資生堂・福原義春名誉会長


・組織にとっては、リーダーを育てることの方が、製品を効率よく低コストで生産することよりも重要である。
・『もしドラ』で終わるな。原点を読むことで自らの血肉となる。解説本を大量に読むよりもドラッカーを何冊か読んでほしい。一度ではなく何度も読んでほしい。


ということで、是非ドラッカーの著作を読んでいただければと思います。

山崎製パンのドラッカー経営については日経ビジネスでも最近触れられていました。

ここで5つの質問というのは

『経営者に贈る5つの質問』

という著作にまとめられた、経営者が自社の経営について自問自答するために、ドラッカーの経営論を集大成したものです。

実にシンプルですが奥の深い質問です。しかし実際の活用には難しい面があります。

そこで、私は5つの質問の階層構造を図式化したうえで、経営戦略作成に便利な戦略マップを工夫してみました。

12月の当社セミナーでその体系とツールをご紹介します。

2010年11月9日火曜日

週刊ダイヤモンド「みんなのドラッカー」①

週刊ダイヤモンド2010年11月6日号の特集タイトルは『みんなのドラッカー』でした。


大々的な特集でしたが、ここでは、識者のドラッカー評をまとめたいと思います。



「人の上に立つ人間には教養が求められる。経営者は幅広く深い知識と経験を備え、適切に判断・アドバイスしなければならない。だからドラッカーはマネジメントを教える上で教養も重視した。」

          山脇秀樹(ドラッカースクール学部長)




「ドラッカーは偉大なマネジメント思想家だが、他の思想家の理論も取り込みながら思想を発展させた。」⇒テイラー、メイヨー、バーナード、シュンペーター等

          ジョセフ・マチャレル (ドラッカースクール教授)





ビジョナリーカンパニーで世界的に有名なジム・コリンズのドラッカー評
  1. ドラッカーの次の言葉で進路を決めた 「君は永続する経営思想を作りたいのか?それとも永続する経営コンサルティング会社を作りたいのかね?」
  2. ドラッカーは社会を生産的にするためではなく、社会を人間的にするために書き続けた。
  3. IBMは成長したから不況期に雇用を維持したのではない。雇用を維持したからこそIBMは成長したのだ。ただし、適材適所な配置ができる完全雇用でなければ意味がない。
  コリンズはピーターの弟子といってよい人物です。


「日本でドラッカー・ブームが起きているそうですが、そこにはノスタルジアもあるでしょう。
40~50年前は経済も社会環境も今ほど複雑ではなかったからです。」

「ピーターは米国・日本の企業は中国・韓国・インドなどの隆盛を見極めるべきと言っていました。先進国は明確な目的意識を持たないとそれらの国々の後塵を拝することになるとみていました。」

「読者がうまく理解できなかったのはマネジャーは単にビジネスにかかわるだけではないということです。マネジャーはコミュニティ内の関係性をマネジメントする人間でもあります。」

「テクノロジー時代においては、個人・企業の仕事の質は前例のないタイプのものとなったので、そこに多くの投資が必要になることをピーターは見抜いていました。」

「ピーターがどうしてあれだけ幅広い知識を養ったのか見当がつきません。ただ、目についた印刷物はすべて読むという並はずれた読書家だったことは確かです。」

         ドリス・ドラッカー (ドラッカー夫人)

    一番身近な人の話は大変参考になりました。



「米国ではピーターの著作の読まれ方にはおおよそ二つのスタイルが混在している。

一つは、ピーターの哲学・考え方に心から賛同し、自らの組織で実践に移して成果を上げている人たちである。

もう一つは、あくまでイメージ作りの一環としてピーターの哲学や考え方を取り入れているというポーズをとる人たちだ。
たとえば、目先の利益を追求するために口先だけでピーターのフレーズを使う。あくなき利潤追求の方便として使っている節がある。」

       リック・ワルツマン (ドラッカー・インスティチュート・エグゼクティブ・ディレクター)


ドラッカーの言葉はウィットにとんだ警句といった色彩もあるので、確かに安直な引用がされやすい側面がありますね。

2010年11月8日月曜日

戦略プランニングについて-ドラッカーとミンツバーグの比較

先週、せっかくミンツバーグの戦略論をまとめましたので、ここでドラッカーの戦略計画論と比較してみます。

以下、ドラッカーの戦略プランニングに関する見解です。


・未来は望むだけでは起こらない。必要なものは戦略計画である。

・戦略計画は魔法の杖ではない、思考であり資源を行動に結びつけるものである。手法ではなく責任である。

・戦略計画は予測ではない。未来を予測できないから戦略計画が必要なのだ。

・企業は予測の基礎となる可能性そのものを変えなければならない。



・「不確実な明日のために今日何をなすべきか」

・経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実性に賭けることである。

・より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、起業家としての成果を向上させる唯一の方法である。


・戦略計画とは何か

①リスクを伴う起業家的な意思決定を行い

②その実行に必要な活動を体系的に組織し

③それらの活動の成果を期待したものと比較測定するという連続したプロセス


・最善の戦略計画さえ、仕事として具体化しなければ、よき意図にすぎない。

・成果は、組織のなかの主な人材を割り当てることによってきまる。


                  『エッセンシャル板 マネジメント』より



ミンツバーグとドラッカーの戦略計画についての理論は非常に近いことが分かります。

ただし、ミンツバーグは創発戦略、つまり自然と出来上がってくる戦略を明確に重視している点がドラッカーと違うところです。

この点についてはミンツバーグが優れていると思います。


ただし、戦略計画についてのまとめ方はドラッカーの方が断然優れています。

こうした警句のうまさはドラッカーの特徴です。



ドラッカーは、戦略計画と戦略思考は同じであると考えています。
ミンツバーグは別物と言っているわけですから、一見すると意見が分かれているように見えます。


しかし、これは言葉の定義の問題にすぎません。両者は、ほぼ同じことを言っていると考えてよいと思います。

書評-「15分あれば喫茶店に入りなさい」

斎藤孝 『15分あれば喫茶店に入りなさい』幻冬舎、2010年  定価 1,365円


私は東京にいた時、1日最低1度は喫茶店に入っていました。多い時には5回ぐらい入りました。

ですからタイトルを見て、だいたい斎藤氏の言いたいことが想像できました。

また、本書では相変わらずの斎藤節が炸裂しています。

以下、印象的な部分を抜き出しておきます。


・喫茶店で垂直思考(自分の深いところで思考を進めること)を深める。

・インターネットは水平思考は促すが、垂直思考は深まらない。

・なぜ垂直思考が必要か?現代人はかつてないほど高い生産性やクリエイティブな価値を生み出すことが求められている。


・負荷をかけないと思考力が伸びない。頭に負荷をかける場所が喫茶店。

「15分」は仕事をするのに十分な時間。1分1秒を無駄にしないで集中する。

・喫茶店でわざわざ何百円ものお金を払うのはコーヒーに対してではなく、「空間を買う」ため。



・日常生活から切り離されることでメンタル・コンディションが整う。

・喫茶店は掘り下げて語りやすい場所。集中した話がしやすい。

・喫茶店にはライブ感がある。ライブ感のある空間では集中しやすい。



・考え事は喫茶店のほうが進む。

・喫茶店は自宅でも職場でもないニュートラルな場所。ニュートラルだから本から刺激を受けやすい。

「懸案事項が多い人は仕事ができる人」。逆に、今引っかかっていることがない人は成果を期待できない。

・懸案事項のリストを作れること自体、レベルが高い証拠。


・喫茶店は大人が勉強する場所である。

・スターバックスは大人の勉強に向いている。



まとめはこれぐらいにしておきます。

本書は当たり前といえば当たり前のことしか書いてありません。

しかし、知的生産の方法論を具体的に書いてあります。また、間違ったやり方が何かもわかるようになっています。


箸休め的なビジネス書ですが、なかなか実用的です。


斎藤氏は、かなり深い話をあっさりと書くという力量のある書き手です。

上のまとめを読むと大した話じゃなさそうですが、例によって決して本書も浅くはありませんでした。


ただし、買わなくても立ち読み程度で十分役立ちます。

2010年11月6日土曜日

◇ ドラッカー理論による事例分析-デンソン社

ドラッカーのマーケティングとイノベーションのための質問によって成功企業の戦略を整理します。



デンソン (埼玉県)

金型反転機というオンリーワン商品を大手メーカーの海外工場に納入




1 顧客はだれか

・プラスチックかダイカスト用の大型の金型を使用する工場



2 顧客は何を買うか

・安全な金型反転作業 (金型は大変重いので反転作業は危険)

・作業効率向上

・場所をとらないこと


3 顧客はどこにいるか

・トヨタ、パナソニック、新日鉄など大手企業の製造部門

・海外に展開した日本企業の現地工場


4 事業はどうなるか

(省略)


5 事業はどうなるべきか

・製造業の海外シフトをにらみ、海外売上比率を高めるべき。

・円高への対応を図るため、モデルチェンジによる低価格化を図る。

・金型以外の重量物を納入先のニーズに合わせて反転できる特注品に対応する。





戦略のまとめ(ミッション)


他社の追随を許さない独自技術の開発

経営資源を開発に集中し、リピーターを確保

海外の日系企業や商社との強固な関係を構築



デンソンのように、オンリーワン商品を持つ企業は、ゆるぎない戦略ポジションが維持しやすいと思います。


こうした商品が売れているうちに次の商品を生み出さないといけないわけですが、デンソンの場合、金型以外の重量物を視野に入れているようです。

商品の横展開とでもいえる方向性ですね。

同社が、金型反転機に乗り出したきっかけは、顧客からの要請にこたえるためといういわば偶然であったようです。


その意味では、デンソンはミンツバーグの創発戦略を成功させた事例であるといえます。


ただし、近年の戦略ポジションの取り方は上記のように計画性を持ってきていますので、事前と事後の戦略のバランスがよく取れている事例と言えるでしょう。

2010年11月5日金曜日

戦略計画と戦略思考の違い-ミンツバーグの理論

ミンツバーグは血の通った戦略論を目指しているように思います。

強みと弱みを分析して計画的に作り上げる戦略はあまり血が通っていないと考えています。

形は美しいが実行が難しいというたぐいの計画です。

以下、ミンツバーグの論文の抜粋です。


・戦略プランニング(1960年代に脚光を浴びた)は今なお健在だが、もはやその土台は崩壊している。

・戦略プランニングと戦略思考が異なることが理解されていない。
戦略プランニングが戦略思考を台無しにした結果、マネジャーたちはビジョンと数字合わせを混同している。


・戦略思考とは、マネジャーがあらゆる情報源から学んだことを検索し、そこで学びとったものをビジネスの方向性に沿った形でビジョンへ統合させること。


・戦略策定の誤ったイメージは、午前中にミッションに関するプレゼン、午後には自社の強みと弱みに関する報告、夕方までには戦略の策定‥‥というもの。
戦略思考はこれと対照的に統合(インテグレーション)である。そこには直感と創造性が関係する。


・戦略プランニングの3つの誤り

 誤り① 予測は可能である 

 ・アンゾフは誤差プラスマイナス20%の精度での予測を重視するができるはずがない。

 誤り② 戦略家は戦略課題とは別世界に存在できる

 ・効果的な戦略は偶然と熟慮の両方の産物である。
 ・どんな戦略もある程度の柔軟な学習とある程度の体系的思考の組み合わせである。

 誤り③ 戦略策定プロセスは定型化できる

 ・定型化とは分析・運用手続き・最終的な行動に至るまでを合理的・連続的に処理すること
 ・学習プロセスによる戦略策定はこれを逆のプロセスをたどることがある。
 ・定型化されたステップでは非連続的変化を予測したり、斬新な戦略を創造することは不可能。


・戦略を策定することは自己完結できるプロセスではない。戦略会議という名称を設けたからと言って戦略が策定できるわけではない。


・戦略策定は一つの組織を管理・運営するために必要なすべてが相互に絡み合うプロセスなのだ。


・戦略策定プロセスを恣意的に定型化するよりも、むしろより自由度を与えるべきだ。


ミンツバーグはこのように戦略策定を親しみやすいものにしようとしています。

また、戦略は現場との接点で生まれる視点から次のようにも述べています。

‥‥要するに、日常に存在する微細な事柄に無関心であってはならないのだ。


これには全く同感です。


当社の環境整備研修では、「オフィスの特定のエリアが急に乱れた場合、事業の状況が変化し、昨日までの仕事のやり方に何らかの不適合が発生した可能性を疑う必要がある」と教えます。

ミンツバーグもやはりわずかな異常や変化を見落とさず、それを手掛かりに戦略を形作る視点を持っているようです。


当社では 環境整備は戦略に従う という命題を提唱していますが、ここからすると

環境整備は戦略を生み出す ということも言えそうです。

それぞれ違う局面についての表現ということになります。

この仮説はさらに検討していきたいと思います。


 

2010年11月4日木曜日

戦略の作られ方-ミンツバーグの理論

またミンツバーグです。

戦略というと、知性的な戦略家が室内で静かに黙想しながら練りあげるといったイメージになりがちです。

ですが、中小企業などではそんな作り方をしている企業は少数派でしょう。

「なんとなくがんばっていたら、ひょんなことからこういうことになってしまった」といったほうが多いのではないでしょうか。

ミンツバーグはそうした戦略を「創発戦略」と名付けています。

そして、計画的な戦略とのバランスが重要であると述べています。



・戦略は試行錯誤しながら形成されていく。


・戦略は策定される場合もあれば、自己形成される場合もあるということである。
言い換えれば、戦略は状況変化に即して形成されることもあれば、
戦略立案から実施段階へと連続するプロセスを経て、論理的に策定される場合もある。



・戦略は日常的な末端の活動から遠く離れた組織の高次元において作成されると考えるのは、因習的なマネジメント論における最大の誤りの一つである。

 

・プランニング(計画化)は学習を排除するが、創発は統制を排除する。
もし、一方に偏りすぎると、どちらの方法もその意味を失う。
学習と統制は結びついていなければならない。



・純粋なプランニング戦略と純粋な創発戦略は一本の線上の両極にあり、
したがってクラフティングは、この線上のどこかに位置することになる。


・優れた戦略は、およそ思いもよらない場所で生まれたり、
考えもしなかった方法で形成されたりする。
したがって、戦略を策定する唯一最善の法など存在しない。



このように、ミンツバーグは事前に計画を立てるという戦略立案方法と、
自然と出来上がってくる、いわば事後的な経営戦略という二つの戦略が対極にあると考えています。

自然と出来上がってくる戦略で動くというのが、いわば中小企業的な感覚です。

そのためミンツバーグは日本の特に中小企業経営者にはしっくりくるはずです。

ただし、ミンツバーグは次のようにくぎを刺しています。


・変化を求め続ける人たちがいる。一つのアイディアから他のアイディアへと転々とし、一つ所に落ち着かない。
このような人たちの場合、特定のテーマとか戦略とかは一向に現れる気配はなく、独自の能力を開拓することはおろか、発展させるには至らない。


やはり、「行き当たりばったりでは限界はあるよ」ということです。

ということで、次回はミンツバーグの戦略論についてさらに深掘りします。

2010年11月3日水曜日

◇ ドラッカー理論による事例分析-コーナン・メディカル社

雑誌の企業事例を元に、私なりにドラッカー理論で整理してみます。


(TKC出版『経営者の四季』2010年12月号より)


ここで紹介する1~3がドラッカーによるマーケティングのための質問。4と5のギャップがイノベーションの質問になります。


ドラッカーはここからさらに8つの目標(マーケティング・イノベーション・生産性・ヒト・モノ・カネ・社会的責任・必要利益)を導き出すわけですが、当社ではそれを独自の戦略マップに整理してから行うことを提唱しています。


戦略マップを掲載できませんのでここでは5つの質問の回答までをまとめています。


このように経営雑誌等の企業紹介をドラッカー経営戦略論で整理すると戦略策定のよいトレーニングになると思います。


コーナン・メディカル社(西宮)

売上高10億円、社員53名

甲南大学のカメラ愛好家集団が母体。半世紀前に創業。使い切りカメラの原型も同社の初期の成果。現在、眼科系医療機器における世界屈指の優良企業との評価。



1 誰が顧客か?


・世界の白内障患者(最終顧客)


・白内障患者を手術する世界中の医者(顧客and流通チャネル)


・技術の事実上の世界標準の決定に影響力を持つ世界の公的機関(流通チャネル)


・信頼できる各国の代理店(流通チャネル)


 *流通チャネルも広義の顧客


2 顧客は何を買うか?


・患者は、安心できる白内障手術を買う


・医者は、現場の意見を十分取り入れた使い勝手の良い機械を買う。


・公的機関は、お墨付きを与えるに足る機械の信頼性を評価する。


・代理店は売り込みをしやすい機械を選ぶ。


 *顧客は効用を買う



3 顧客はどこにいるか?


・世界中にいる。


・今後は特に中南米などの開発途上国にいるようになる。



4 事業はどうなるか?



(省略)



5 事業はどうあるべきか?(イノベーション)



・「創りたいものを創る」‥創業当初からのチャレンジ精神


・開発に特化し、ファブレス体制を構築する。


・眼科分野だけではなく、鼻・耳など首から上の器官の病気予防の検査機械を開発する。


・海外売上比率を6割以上にする。





戦略の概要というのはこの程度の記述で十分わかると思います。

本当に良い戦略とは寝ているとき、入浴の時、トイレにいる時、歩いている時などにふと思いつき、手早く骨格をまとめることができる程度のものだと思います。


それを具体的な目標に落とし込む時には詳しい検討が必要になりますが、戦略の根幹は20~30分程度でまとめることができるはずです。



12月8日の当社セミナーではユニクロの事例をドラッカー戦略マップを利用してご紹介します。

2010年11月2日火曜日

「予期せぬ成功」の起こし方

前回はハインリッヒの法則から「何もないことは大問題」という命題が導かれた話をしました。

今回は、その逆バージョンです。


ドラッカーは 『強みは予期せぬ成功によって知ることができる』 と述べています。

そこから「何もないことは大問題」は、良い結果が出ないことにも言えるのではないかと考えました。


なぜ予期せぬ出来事(思わぬ良い結果)が起きないのか、つまり「成果」が得られないのか?

この「成果」という言葉をハインリッヒの法則の「事故」と置き換えることができるのではないかと考えました。

それを表現すると次のようになります。


1つの大成果の後ろでは29の小さな成果があり、さらにその背景には300件のちょっとした工夫・打ち手が存在する。


たとえば営業の場合を考えてみます。


大きな契約が1件とれた場合を大成果とします。

すると契約が取れなければ成果が上がっていないのでしょうか?それは違うと思います。例をあげましょう。

・今まで門前払いだった相手の担当者が話を聞いてくれるようになった。

・話は聞いてくれていたがそっけなかったのに、最近では笑顔で色々話をしてくれるようになった。

・役職がより上位の人が話をしてくれるようになった。

・相手からかかってくる電話が増えた。


といった状況変化があれば、それは「小さな成果」と考えてよいと思います。

どの程度を成果と見るかについては見解は分かれるでしょうが、打ち手の数より小さな成果の数はより少なくなり、大成果はさらにそれよりはるかに少なくなるという論理は否定できないはずです。


小さな変化を起こすためには、ほんのちょっとした気遣いや打ち手を数限りなく打つ必要があります。

当たり前のことを当たり前のレベルでしかやらなければ小さな成果すら生み出せないでしょう。



小さな打ち手の数を増やすことはいくらでも工夫の余地があります。小さな打ち手をたくさん打っているかは本人にしかわかりません。

ですが、それは現象としては「小さな成果」の発生、つまり予期せぬ(良い)出来事が起きていることで外からも確認できます。



すると『できるビジネスパーソン』は次のような人であることになります。


できるビジネスパーソンとは、ときどき大きな成果を上げ、
継続的に小さな成果を上げ、日常的には小さな打ち手と工夫を積み重ねる人である。



成果と打ち手の関係がはたして1:29:300になるかはわかりませんが、おそらく良いことも悪いことも兆候と結果の関係という意味ではそんなにかわらないと推測しています。

2010年11月1日月曜日

何もないことは大問題

私の口癖の一つに 『何もないことが大問題』 というものがあります。


これはもともと労災の統計的法則であるハインリッヒの法則から思いついたものです。


ハインリッヒの法則は、ヒヤリ・ハットの法則などとも呼ばれたりします。


死亡事故1件が発生する背後に傷害事故が29件発生している。さらにその背後には300件のヒヤリ・ハット(インシデント)が発生しているという法則です。

そこでヒヤリ・ハットをつぶし続けていけば、大事故の発生は起きないという仮定を置き、細部にこだわる日常的管理を行っていくという考え方です。


ビジネスにおいては、大きな失敗やトラブルを定期的に起こす人は「何も問題ありません」という発言を多くする傾向があります。

この「何も問題ありません」という言葉は、「ヒヤリ・ハットが見えません」と言う意味です。本当に問題がないわけではありません。



日本の製造業に品質の大切さを教え込んだ、エドワード・デミングが次のような言葉を残しています。


『そもそも大きな問題というのは、問題を抱えていることを自覚していない人たちのところにあるものだ。』



ハインリッヒの法則の話に戻しますと

小さなヒヤリ・ハットが300件積み重なると確率的に大事故が発生するわけです。


「何も問題ありません」という言葉の背後にある小さな違和感やズレの見落としが300件積み重なったときに大きなトラブルが起きるわけです


細かい違和感を見落とすことは許してはならないのです。

また、そこから私はハインリッヒの法則の逆パターンを思いつきました。

それについて次回解説したいと思います。

ドラッカーと人材開発

日曜日にNPO東海マネジメント研究会の定例勉強会があり、㈱アドウィルの村木氏による発表がありました。


村木氏はキャリア開発に力を入れており、今回、ドラッカー理論をベースにした新しいコンセプトのたたき台を提供してくれました。


キャリアの観点から人材の「自己重要感」を重視し、「気づき」を切り口とすることだそうです。


そしてそこにドラッカーのイノベーション理論を導入するということでした。


と書くと、なんだか難しげですが、ポイントはドラッカーの「予期せぬ出来事」の概念に注目しているところです。


村木氏は、日々の気づきからスタートするためにサプライズ分析なる方法を提唱しました。

つまり、

・最近、意外にうまくいったこと

・最近、意外にうまくいかなかったこと

・最近、起きていること


これらを直感的に見つけるところから分析をスタートさせるのです。そしてそこに本人の強みを見つけたり、取り組み方の良い点悪い点を考えさせるきっかけとしたりするよ言う者のようでした。

最終的なゴールとしてイノベーションを起こさせ、達成感を満たすようにするということでした。


実行プロセスには多々問題があるとのお話でしたが、私は有益なアプローチとであると思いました。


私も人材開発は、予期せぬ成功に注目するのが最も良いと思っていました。


ですから、当社の場合、月単位で作成する目標管理シートで最も重要な情報を「予期せぬ出来事」の記述ととらえています。


予期せぬ出来事(特に小さな成功)は本人の強みを生かした主体的な活動の中で発生します。

ずっと仕事を続けていて自身の仕事から「サプライズ」が起きない場合、その仕事への取り組み方自体が陳腐になっているのではないかと考えるべきなのです。


予期せぬよい出来事は、主体的な仕事をしている人にしかおきません。


当社の場合、目標管理シートが年間12枚提出されるわけですが、そこに書かれていることが本人の認識している成果であるわけです。

そこに何も書いてなければ、本人は成果を上げていないという自己認識をもっていることになります。

村木氏の場合、自身に起きたサプライズを掘り下げていくことで、人材開発を行おうと考えているわけです。

これはドラッカーの言う本来の意味での目標管理制度の発想に近いと思います。



成果は自分自身で認識してもらう。

予期せぬよい出来事が起きるように些細な行動に工夫を凝らす。



こうしたことを自分自身で行うことがビジネスパーソンとしての付加価値をあげる早道であることを理解してもらう必要があります。

ドラッカーは企業は成長する経済か、大きく変化する経済のもとでしか存在できないと言っています。

経済が成長しない現在、変化は自分自身で作らないといけません。1個人としてできる最も効果的な取り組みは「予期せぬ出来事」への注目になると思います。