現在、いろいろな戦略論を整理しているので、ミンツバーグの戦略論を簡単に書きます。
ミンツバーグは、戦略とは試行錯誤を繰り返しながら、意図せざる形に形成されるものととらえました。
一般的な経営戦略のイメージが事前に詳細に検討して立案するものであるのに対し、ミンツバーグは事後的な戦略論というものを思いついたわけです。
80年代には、ミンツバーグは競争戦略論の大御所であるマイケル・ポーターと激しい論争を繰り返したという経緯があります。
二人の意見は正反対なものなのですが、ドラッカーはこの二人の戦略論のどちらも含まれてしまうほど大きな器の戦略論の持ち主です。
ということで、ミンツバーグの戦略論の事例を紹介します。
1960年代の米国の二輪車輸入市場はホンダが大変な勢いであった。輸入市場のシェアの6割を占めるほどであった。
ライバル社は、ホンダが中産階級にターゲットを絞って小型オートバイを販売する戦略をとったと考えていたが、実際に調査してみると事情が違っていた。
ホンダが米国市場で販売したかったのは当時米国で主流であった大型オートバイであった。
しかし、ホンダの大型バイクは全く売れないので困っていた。
そんな中、ホンダの社員が自分たちの足代わりに使っていた50ccのスーパーカブが、ロサンゼルスの街中で話題になっていた。
それに注目したスーパーマーケットのシアーズのバイヤーが、「スーパーカブを扱いたい」というオファーをホンダに出したのである。
ホンダ側は当初は「50ccを売ることは自分たちのイメージを損なう」として、当初は拒否していた。
しかし、シアーズの熱心な誘いに負けて、仕方なく50ccを販売することになった。
それがホンダ躍進の足がかりとなったというのが真相である。
まさに、瓢箪から駒というやつです。
このエピソードは米国ではとくに有名で、主要なMBAではケース・スタディとして教えているそうです。
これが事後的な戦略というものです。
ドラッカーはこうした出来事を「予期せぬ成功」といっています。
予期せぬ成功こそイノベーションの種であり、新たな強みや卓越性のもととなるものなのです。
(浅沼 宏和)