ドラッカーの『マネジメント』から賃金体系の考え方について抜き書きします。
どのような報酬体系においても、金銭は決してガラス張りではなく、繊細な価値観や性質をあらわす。
このため、本当の意味でシンプルで合理的な報酬体系などあり得ないのだ。‥
‥「科学に根差した方程式」を持ち込もうとしても完璧な成果は期待できない。
最善の報酬プランといえども、組織をまとめ上げる一方で分裂の芽を生み、方向付けをする一方で誤った方向へもそれる。
そして正しい行動だけではなく、望ましくない行動をも引き起こすのだ。‥
複雑な体系とシンプルな体系とでは、後者を選ぶべきである。
お仕着せの方程式を一律に当てはめるよりも、裁量の余地を残し、各人の職務内容に会った報酬を支払うべきである。
これがドラッカーの賃金体系の考え方です。
これに反して複雑で計算式を多く用いるような人事制度、報酬制度を導入されている例が多くありますが、運用のためのコストは多くなる一方で、それに見合ったメリットがあるかというと疑問が残ります。
人の作る制度には限界があるということを忘れず、適切な運用によって求める姿を実現することが大切であると思われます。
(浅沼 宏和)