しかし、企業の側ではこの違いが十分に意識されていないため、戦略が不在のままになっているといいます。
ポーターは米国の商業印刷業界の例を取り上げつつ、次のように言っています。
‥こうした競争はオペレーション効率を絶対的に改善するものの、相対的な優位は誰も手にしない結果に終わる。
‥生産性の改善分は、ほとんどが顧客や機器供給業者に還元されてしまい、優れた収益性という形では残らない。
効率性を争う競争では企業同士が似てしまうため、結局どの会社も利益が得られないというのです。
‥戦略は同じものに収斂していく。そして競争は、すべての企業が同じ道をひた走る、誰も勝利を得られないものとなってしまう。
オペレーション効率のみに立脚した競争はお互いに傷つけるだけであり、競争を制限することでしか止めようのない消耗戦になってしまう。
ということです。
ポーターは80年代までの日本企業の躍進が効率性競争に勝利したことでもたらされたものであり、その後の失速は戦略の不在によるものと分析しています。
(浅沼 宏和))