2010年5月9日日曜日

仕事と付加価値

ユニクロ柳井氏の仕事観と小宮一慶氏の仕事観は似ています。

どちらもドラッカー信奉者であるので当たり前といえば当たり前ですが。

柳井氏は知識労働者を非常に重視する経営者です。

柳井氏流の表現ですと「自営業の意識」で働く店長が知識労働者なのだそうです。

つまり最終責任を自分が負っていることの自覚を持ち働く人のことです。

小宮氏は仕事と作業についての違いは「やる気」の違いと言っています。

私はそれについて高付加価値が仕事、低付加価値が作業であるといいかえました。
さらに別の言い方ですと、その人にしかできないものが仕事、誰にでもできるのが作業です。

たとえば町のうどん屋さんの中には10人以上のお客さんの注文を耳で聞くだけで覚えこんで、全く間違いのない女性がいたりします。あまりの神業ぶりにTV番組で取り上げられたりします。
この人は「仕事」をしているわけです。

小さなうどん屋の注文取りというありふれた業務であっても抜きんでることが可能であるというわけです。

どんな小さな役割であっても「仕事」になる可能性があると思います。

2010年5月8日土曜日

ユニクロ柳井氏の社員観②

柳井氏はユニクロの店長は知識労働者であると考えています。

「 お客さまと一番近い場所にいるのは店舗の販売員や店長ですからね。
‥‥お客さまのことを一番わかっているのは店舗の従業員。だからすべての正解は、本部にではなく店の現場にあるというのが、私たちの考え方なんです。 」

だから柳井氏は「店舗=考える人」という図式を描いたわけです。考える人とは知識労働者のことです。

「 ずっと売る側にばかりいると、自分の店を客観的に見られなくなってくることがあるんです。
‥‥忙しい店舗だと、どうしても細かい部分に目がいかなくなってエントランスに草が生えたり、POPが傾いていてもきづかなかったりすることもあるんです。 」

こうした現場観のもとに柳井氏の社員観は形作られているようです。

現場の人間の意識水準が低ければ企業のレベルが低いままにとどまってしまうということです。

また柳井氏は「知識労働者とは自分で考え、マニュアルに書かれていないこと、言われていないことを自ら行う人のこと」であると述べています。

この細部に目がいくという点が重要であると思います。細かい改善やヒヤリ・ハット(インシデント)を見つける人は細部に目が行く人であるといえます。

そこで人材のレベルは改善提案数・ヒヤリハット(インシデント)報告数に比例するという命題が成立すると思います。

2010年5月7日金曜日

ユニクロ柳井氏の社員観①

柳井氏は現場の仕事は毎日毎日改善されていくべきだという考え方の人です。

「 特に変化のない企業では、日常の業務をこなしているということだけで評価されてしまう傾向があります。
昨日の仕事と同じことを今日もやって、それなりに真面目に働いていれば、ある程度の評価を受け、年齢を経ればそれなりの立場につくことになる。
先ほど、終身雇用制を含めて日本企業のいい部分がマンネリ化していった、と僕は言いましたが、マンネリ化、形骸化とはそういうことなんですよ。 」

柳井氏はドラッカーの知識労働者という概念を重視しています。

ユニクロの店長は知識労働者でなければならないというのが柳井氏の信念です。

また柳井氏はプロフェッショナルになるためには、与えられた仕事だけをこなすのではなく、自分で仕事を見つけるようにならなければダメであると言っています。

その前提となるのが
「未来に向かって成長していくことをやめた企業は、企業としては成り立たない」
という考えです。

こうした企業観をもとに、知識労働者としての社員の在り方についての考えをまとめているようです。

しかし、柳井氏によればユニクロといえども「知識労働者と呼べる店長は10人に1人」なのだそうで、人材育成の難しさがうかがわれます。

2010年5月6日木曜日

ユニクロ柳井氏の現場論

「 一見したところ、同じ商品のように見えるかもしれませんが、じつはユニクロでは毎日毎週、修正を繰り返しながら本当にいい商品を店に送り出しているんです。 」

これは柳井氏が知識労働者としての店長の役割について語った際に述べている言葉です。
この言葉は日常的な仕事についての正しい姿勢を示すものであると思います。

私は以前、京都の老舗の漬物屋のご主人が

「お客さんはうちの味を『変わらないね』といってほめてくださる。
実はうちの漬物は江戸時代から比べると全然違うものになっている。
それどころか毎年微妙に違う。『変わらないね』といっていただくために毎年変えている。」

とおっしゃるのを聞いて感銘を受けたのですが、同じ話であると思います。

つまり、同じ商品をなんの改善も加えずに出し続けることはあってはならないということです。

お客さんはどんどん変化していくわけですから、その変化に対応し、場合によっては先取りまでしなくてはならないわけです。

また柳井氏は

「 一番厳しいお客様がお店に入ってきて、店や従業員たちを見てどんなふうに感じるかをシミュレーションしてみなさい 」

とも言っています。

これを1日3回やればその店は必ず最高の店になるそうです。

日々の微細な改善の積み重ねが現場力を高めるという考え方は製造業のみならず、あらゆる業種で当てはまることであると思います。

2010年5月5日水曜日

柳井正氏のドラッカー経験

ユニクロの柳井正氏は最初からドラッカー経営の信奉者ではなかったようです。

初めてドラッカーを手にしたのは大学生のころであったそうですが、記憶はほとんどないとのことです。

ジャスコの社員として社会人のスタートを切り、数年で実家の紳士服店とカジュアルショップを引き継いだ時に、わずか数名の社員のマネジメントにも苦労した時に改めてドラッカーを読んだのだそうです。

25歳のころだったそうですが、その時も感動するほどではなかったそうです。

その後、現在のユニクロの原型のビジネスを始め、いざ上場にまでこぎつけたころにドラッカーを読んだときに、初めてドラッカーの本当のすごさを理解することができたと述べています。

書評-「ドラッカー思想と現代経営」

宮内拓智・小沢道紀編著『ドラッカー思想と現代経営』晃洋書房、2010年  定価2,625円


本書はドラッカー学会立命館支部の関係者の論文集です。
およそドラッカー理論を正面から扱っている学術的文献はごく限られています。

こうした論文集が出版されること自体、ドラッカーに対する世間の評価の変化の大きな兆候といえるでしょう。

本書は14名もの研究者の共著であるため、ドラッカーへの理解はまちまちです。

非常に深い視点から考察している論文は3分の1程度です。それ以外は自身の研究テーマにドラッカー的味付けがなされているというタイプのものです。

それでもドラッカーの全集を読んでいるような人には参考になる本であると思います。
ドラッカー理論の学問的位置づけについての意見が、いくつも見受けられ、それはとても参考になりました。

ただし、実践的なヒントを期待する向きにはあまり向かない本です。

私個人としてはドラッカーのイノベーション概念についてシュンペーターのイノベーション概念やクリスチャンセンの破壊的イノベーション概念との対比を行っている論考です。

おそらくシュンペーターとクリスチャンセンは今後ずっと重要な経営学者であり続けるでしょうからドラッカーと対比してくれている文献は刺激的です。

2010年5月4日火曜日

書評-「わがドラッカー流経営論」

柳井正著『わがドラッカー流経営論』NHK出版、2010年  定価998円  


最近、多くのドラッカー関連の書籍が刊行されていますが、本書は中でも重要なものです。

昨年、NHKで4回にわたりユニクロの柳井正氏が自分自身のドラッカー経営を語る特集がありました。
おそらく本書は好評につき書籍化されたものでしょう。

ドラッカー経営の実践者として柳井正氏は最も有名でしょう。

本書によると柳井氏は
「 ‥‥ぼくは人生の節目節目でドラッカーの著書を読み返し、自分の立ち位置を再確認するとともに、ときには彼の言葉に勇気づけられ、背中を押されてきたような気がしているんです。
ドラッカーはぼくにとっての経営の先生であるとともに、進むべき道、企業のあるべき本質的な姿を示してくれる羅針盤のような存在だといってもいいでしょう。 」

この言葉に柳井氏のドラッカーについての考え方が集約されているように思います。

超おすすめドラッカー経営本です。

2010年5月3日月曜日

書評-「どんな時代もサバイバル人の『時間力』養成講座」

小宮一慶著『どんな時代もサバイバルする人の「時間力」養成講座』ディスカバー携書、2009年 定価1,050円


本書も基本はドラッカー理論をベースとしていると推測されます。
ドラッカー度数80%以上です。

しかし、小宮氏の著作はドラッカーの咀嚼度が高く、ビジネスパーソンにとっては有益です。
ただし、せめてドラッカーの「現代の経営」か「エッセンシャル版マネジメント」を読んでおかないと十分な活用ができないような気もします。


時間をうまく使う方法として、まず時間の使い方を知ることをドラッカーは進めています。
小宮氏も同じ出発点です。使い方がわからなければよりよい方法はとれないからです。

そして時間を使うという意味について「成果を上げる」ために使うという意識が強調されています。

最終的により大きな成果を上げるためにどうすべきかという観点です。

中でも印象的な表現は「仕事と作業の違い」についてです。

私流に定義すると、付加価値の高いのが仕事で、低付加価値が作業です。
また、その人にしかできないのが仕事で、誰でもできるのが作業ともいえるでしょう。

ビジネスパーソンは労働時間ではなく、アウトプット、つまり成果で判断されます。年齢があがればあがるほど成果の意味が大きくなります。

私はドラッカー経営の観点からは、結局、時間管理とは成果管理といえると考えています。

2010年5月2日日曜日

書評-「持続可能な未来へ」

ピーター・センゲ『持続可能な未来へ』日本経済新聞社、2009年  定価2,520円


センゲは「学習する組織」を提唱した有名な経営学者です。

私は以前に、現・法政大学大学院教授と編著である「キーワードで読む経営学」で、経営学100年の歴史をまとめた章を分担執筆したことがあります。

その執筆の際の大きな悩みの一つは、わずか12ページの制約の中で、どの経営学者を得fら部下というものでした。

センゲの「学習する組織」は非常に重要であると判断して取り上げたことを思い出しました。

センゲの考えは、組織が複雑かつ変化の激しい外部環境に適応するためには組織として学習する必要があるというものです。本書はそれをさらに広く社会の持続可能性に結び付けて検討しようとするものです。

今回の本のコンセプトは、現代社会の抱える複雑な諸問題についてマサチューセッツ工科大学の考案した「システム・ダイナミクス」という手法で解決を図ろうというものです。

私は現代的問題を「手法」で解決できるとは思わないのですが、センゲが学習する組織のコンセプトをさらにグレードアップする視点を提起しようとしている点には感銘を受けました。

書評-「プライスレス」

バウンドストーン著『プライスレス』青土社、2010年 定価2,520円


前にフェアリー著の「予想通り不合理」を取り上げましたが、私は経済学の最近のはやりである行動経済学に興味があります。
本書もその一環ですが、印象深いエピソードを一つ上げます。

高級ブランドの店頭には目立つ所に超高額商品を1点置いておくそうです。
そうすると他の高額商品が割安に見えるため、衝動買いが起きやすいのだそうです。

この応用として、いつもと違う容器に飲み物を入れると、実際には割高になるにもかかわらず適正な判断ができなくて購入してしまうのだそうです。


例えば、上の例とは別になりますが吉野家の牛丼は一番大きい特盛りが一番損なのだそうです。

売りたいものをどのように見せるかがポイントということでしょう。

ドラッカーによればマーケティングの要諦は「自然と売れる仕組みを作る」ことです。

行動経済学は、天才的な感覚のない人間にも役立つマーケティングの視点を提供してくれるように思われます。