2010年8月10日火曜日

書評 「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」

林總『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』ダイヤモンド社、2006年  定価1,575円



名古屋のブックオフでたまたま見つけて購入したのですが、大当たりでした。

本書は会計実務家必読です。


タイトルが変わっていますので、中身が薄そうに聞こえますが、本書の内容はかなりハイレベルで、会計専門家でも十分満足できる内容です。

また、マネジメントの本としても優れていて、私がインパクトを感じた命題が10個以上含まれていました。

命題のレベルもよく練れていて高く、これを生みだすのに長い思索を経ていることがわかります。

以下、インパクトのある命題を抜き書きます。

・会計の使命は会社の活動を「可視化」すること。

・絶対的に正しい決算書は存在しない。

・大トロは儲からない。仕入れた大トロが現金化する速度は1カ月。コハダは即日現金化する。この速度の差。

・会計はキャッシュフローと利益概念を用いて行動計画の実行可能性を検証するツール。

・「蒲田の餃子屋のオーナーは不況のなった時にどれだけ損をするか考える。
 銀座のフレンチのオーナーは不況といえども圧倒的な差別化で顧客を絶え間なく引きつけなければならない。」 -損益分岐点分析から割り出した結論

・ブランド価値とは見えない現金製造機のこと。

・バランスシートの左の資産を実態以上に膨らませれば、右にある利益もその分増えたように見せかけられる。 ―粉飾決算の基本原理

・殺風景な工場ほど儲かっている。

・一流の蕎麦屋には無駄がない。これは生産現場の普遍的原理といってよい。

・可視化とは異常点が目に飛び込んでくる状態のこと。

・会計数値で異常を見つけたら、そこを突破口にするのだ。現場に行き、関係者の話を聞き、とことん原因を突き詰める。

・シャーロックホームズの目と行動力を持つことが大切なのだ。

・会計知識だけで数字の裏側は絶対に見えない。


本書のスタンスには共感を覚えます。

会計専門家は会計知識を前面に出しがちなのですが、私はそのスタイルでは限界があると考えています。

会計の限界を明確に示し、その神格化を排除する姿勢はとてもよいと思います。


また、偶然ですが私もシャーロックホームズ的な思考法がビジネスパーソンに有益であると考えており、セミナーなどでもそう言ってきました。

ホームズの思考法はアブダクション(仮説的推論)と呼ばれるもので、ある現象を適切に説明できる仮説を導き出すというものです。

優れたビジネスパーソンは例外なくアブダクションの能力が高いと思います。


このアブダクションは会計の専門知識とは違った能力であり、アブダクションの能力を高めなければ決算書から意味ある情報を見出すことは難しいと思います。

アブダクションは場合によっては「こじつけ」と言われたりするものですが、適切な学習によってその技能を高めることが可能であると思います。

アブダクションについては、また別途に説明したいと思います。

2010年8月9日月曜日

書評 「社長になる人はなぜゴルフがうまいのか?」

西田文郎『社長になる人はなぜゴルフがうまいのか?』かんき出版、2010年   定価1,470円




最近売れている本の一つです。

私はゴルフをやらないので、逆にタイトルが気になり購入しました。

本の帯にはかなり刺激的な説明が書いてあります。



もし石川遼選手がビジネスマンになっても必ず成功するだろう。
なぜなら彼には半端なく稼ぐ社長たちと共通する力があるからだ!



こんな文句にひかれて購入した人が多数であると思います。

しかし、結論から言いますと本書は典型的な自己実現本であり、またメンタルコントロール本です。

内容的にはありきたりです。

つまり、

1、大きな夢を持ち、その実現を信じ込む。
2、目標を具体的にする。

あとはゴルフなどを例にとってメンタルコントロールのテクニックを伝授するというものです。

メンタルをフィジカル同様に鍛えるというコンセプトは、『メンタル・タフネス』以来の定番のテーマです。

しかし、本書には、ネーミングのうまさ、切り口のうまさがあります。秀逸であると思います。

内容はありきたりですが、それを今風の雰囲気を加えて説明している点もとてもうまいと思いました。

文章の雰囲気も手軽で読みやすい感じがします。

2010年8月8日日曜日

書評 「ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣」

美月あきこ『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』祥伝社、2010年 定価 1,470円


筆者はもとCAで、ファーストクラスに搭乗する数々の成功者の共通点を真似することで成功に近づこうと主張しています。

ファーストクラスに乗れないレベルの人間を見下す記述が多々見受けられ、その点ではあまり好感を持てませんでした。

しかしながら、成功者に共通する特徴という面では参考になりますので、その点に絞ってご紹介します。


・寸暇を惜しんで仕事をする人間はファーストクラスにはいない。
・メモ魔が多い。というよりメモを取らない人間がいない。どんな紙にでも気にせずメモをとる。
・機内での過ごし方までCAにメモで指示をする人もいる。

・健康管理に気を使っている。食事にも非常に気を使う。
・朝の時間を大事にしている。ルーティーンワークは午後に回している。

・新聞は必ず読んできている。だから機内で朝刊を読みたいというリクエストがない。
・読書家が多い。13時間で8冊読んだ客もいた。伝記・歴史小説を読む人が多い。

・自身の衣類を非常に丁寧に扱う。
・靴は人目に付かない場所にそろえる。汚れた靴の中を見せるのを失礼と考える人が多い。

・ペンを持っていない人はいない。自身のペンについてのこだわりも強い。
・手帳はシンプルなものを使う人が多い。

・非常に聞き取りやすい声の人が多い。
・姿勢の良さが目立つ。

・自身の要望を伝えるのに「予告」と「確認」を行う人が多い。
・クレームの伝え方も洗練されている。

・第一印象がよく。第二印象(声・姿勢・顔)はさらに良い人が多い。

・顔相がよい。両目の大きさが同じで黒眼が輝いている。顔色がよくつやがある。山(額・鼻・頬・顎)がしっかりしていて小鼻が張っている。

・自分のポジションに応じた人脈を持っている。自分の周りにいる人10人をピックアップし、10で割ると現在の自分の格を示す。

などなどです。

成功者の共通点というわけでしょうが、参考にはなりますがそれ以上のものではありません。

ここに書いたことぐらいを押さえておけば十分でしょう。

2010年8月7日土曜日

閑話休題-石工の話

三人の石工の話はドラッカー経営ではとてもよく引用されます。

1人目は「石を積んでいる」と答え、2人目は「国一番の石工の仕事をしている」と答え、3人目が「大聖堂を立てている」と答えるという話です。

これはバリエーションが色々あり、古代エジプトでピラミッドを作る話や古代ローマの城壁建築の話になったりします。

最近、また別のバージョンを見つけたのでご紹介しておきます。


大工たちがカンナで木を削っていました。

若い新人に「あなたは何をしているのですか?」と聞くと

 「木を削っています。」 と答えます。

次に先輩職人に聞くと

 「柱を作っているんです。」 と答えます。

次にベテラン職人に聞くと

 「家を建てているんです。」 と答えます。

最後に棟梁に聞くと

 「家族の楽しい団欒の場を作っているんですよ。」 と答えました。


このバージョンでは登場人物が4人に増えています。

棟梁は建物の果たす目的を意識しているということになりますが、古代ローマ・ヴァージョンでは城壁づくりを「町を守る仕事をしています。」と答えることになっています。

4人のほうがよりわかりやすいですが、3人のほうが味わい深いように思えます。

2010年8月6日金曜日

仕事のやり方

有能であった人が新しい仕事に就くと急に凡人になる。


彼らは新しい任務についても前の仕事で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことをやり続ける。


そのあげく役に立たない仕事しかできなくなる。


彼らは無能になったのではなく、間違った仕事のやり方をしているためそうなっている。


                  『プロフェッショナルの条件』より



これは好成績によって昇格した人のための戒めですね。

任務が違えば仕事のやり方は違います。

新たな仕事については、そのあげるべき成果と貢献の在り方を考え直さなければなりません。

また、任務が同じでも状況が変わった場合には今までの仕事のやり方を根本的に見直さなければなりません。

昔の成功体験が忘れられず、その方法が陳腐化した後もいつまでもそのやり方にこだわり続ける人がいます。

どこかでそれに気がつかないとビジネスパーソンとして終わってしまいかねません。心しておく言葉ですね。

2010年8月5日木曜日

成果についての考え方

ドラッカーの成果の考えは明確ではありませんので、『プロフェッショナルの条件』の中から関連する記述を抜粋してみましょう。


・ものごとをなすべき者の仕事は成果を上げること。しかし、成果を上げている者は少ない。
・肉体労働者は能率を上げればよい。知識労働者は組織の目的に貢献して初めて成果を上げることができる。

・知識労働者は成果を上げるべく自らをマネジメントしなければならない。
・ものごとをなすべき者はエグゼクティブである。現代社会ではすべての者がエグゼクティブである。

・エグゼクティブは自らの貢献について責任を負わなければならない。
・ゲリラ戦では全員がエグゼクティブである。

・知識労働は量やコストによって規定されない。成果によって規定される。部下の数や管理的仕事の多さは基準とならない。

・仕事や成果を大幅に改善するための唯一の方法は、成果を上げるための能力を向上させることである。

・成果を上げることは一つの習慣である。習慣的な能力の積み重ねである。

・成果を上げるには貢献に焦点を合わせなければならない。貢献に焦点を合わせることで、組織全体の成果に注意を向けるようになる。



こうしたことから私は経営者・管理者レベルの成果の「見える化」の問題を色々と考えています。

ごく単純な話としては、成果があがったらスケジュール帳に★をつけていくという方法が良いと考えています。最高の成果なら★★★をつけます。

ちなみに、私は7月中の成果は全部で43ありました。三ツ星が1、二つ星が11、一つ星が31でした。


この場合、成果とは顧客もしくは当社のイメージにプラスに寄与する出来事と定義しています。
3つ星は新規の仕事の受注ないしそれに準ずる価値の創出です。

このようにするとカウントできますし、スケジュール帳の午前・午後単位の効率性評価と合わせると、次月以降の改善点が浮かび上がってきます。


このテクニックは「習慣的な能力の積み重ね」というドラッカーの考えに合致していると思います。

2010年8月3日火曜日

成果を上げるスタイル

成果を上げる人とあげない人の差は才能ではない。

いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である。

                 『非営利組織の経営』より


この習慣的姿勢と基礎的な方法について明示されていないため、ドラッカーのいろいろな表現をもとにして考えなければなりません。


まず、習慣的な姿勢としては、できる限りのことを行うということであると思います。

プロフェッショナルの倫理は最善を尽くすことですが、最善を尽くすとは自身のできることはすべてやりつくすということです。

これ以上、ほんのわずかな努力の上積み、集中力の発揮、事前の準備はできないかを常に自身に問う姿勢であると思います。

次いで、基礎的な方法とは成果に対する自身の役割を明確化する思考であると思います。

これは現時点では仮説ですので今後のブラッシュアップが必要です。

書評 「近江商人学入門」

末永國紀『近江商人学入門」淡海文庫、2004年  定価 1,260円 


近江からは続々と商売上手が登場しました。

また、日本生命、高島屋、伊藤忠、丸紅、トーメン、ニチメン、武田薬品、日本生命など数多くの企業は近江商人の系譜をひいています。

さらに、近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」として知られる三方よしの思想を生んだことで、日本におけるCSRの源流の一つといわれています。

私は東海マネジメント研究会の活動の一環で滋賀県の近江商人記念館を訪ねたこともあり、近江商人には強く関心を持っています。

基本的には、なぜ滋賀県の片田舎に本拠地を置いたままで富豪になることができたのだろうかということに関心を持っています。

以下、本書の中からキーワードを列挙しておきます。

持ち下り商い
近江商人の基本は行商でした。上方の商品を天秤棒にぶら下げて地方に下り、今度はその地方の物産を仕入れて上方で売りさばくという、往復ともに商売になるというノコギリ商いからスタートしました。

卸行商
最初は少ない元手しかありませんので、天秤棒で商品を担いで行く持ち下り商いをするのですが、商売先の土地で有力者と知り合いになり、信用ができると、そこに馬や船で大量に商品を送るようになります。
自身で担ぐ天秤棒には身の回りの品だけをぶら下げて出向くようになり、地域の商人たちを集めて委託販売などの商談を行いました。

行商団体
商人同士の過当競争を避けるために、地域ごとに行商団体を組織しました。
そして債権回収や情報収集などの役目を果たす特約旅館制度などを設けました。

諸国物産まわし
こうして資産を築くと、近江商人は複数の地方に出店を開きました。出店は商品の輸送・保管場所として前線基地の役目を果たし、そこからさらに枝店が広がりました。
そして出店同士の情報交換から各地方の物資の価格差を利用して大規模な物資の流通を行いました。


すぐおわかりになるでしょうが、総合商社と同じビジネス形態です。

多くの商社の原型が近江商人であるのも当然です。

江戸時代のようにテクノロジーが発展していない時代にこれほどの先進的経営を行っていたことは驚きです。

その他、各地方に根付き、そこで酒造や織物などの事業を展開し、成功した人も多かったといいます。

また近江商人は、複式簿記制度をもっていたこともわかっていますし、独特の人材募集・育成制度を持っていたこともわかっています。

近江商人はこうした卓越したビジネスを行ってきましたが、基本的には薄い利益で信用を築き、人一倍勤勉に働くという王道の商売を行っていました。
私はこうした精神がドラッカーに通じるものがあると思っています。

近江商人については継続的に研究していきたいと思っています。

2010年8月2日月曜日

成果について

成果とは百発百中ではない。

百発百中は曲芸である。

成果とは、長期にわたって業績をもたらし続けることである。

                        『マネジメント』より



ドラッカー経営学の最重要概念の一つが成果です。

しかし、ドラッカーは成果について詳細な定義を行っていません。ですから、成果についてドラッカーが語ることから類推するしかありません。

上の定義からも、成果とは長期的視点に基づくものであることが分かります。



成果を上げる人たちは、気性や能力、職種や仕事のやり方、性格や知識や関心において千差万別である。

共通点はなすべきことを成し遂げる能力を持っていることだけである。

                      『経営者の条件』より



なすべきことを成し遂げるとは やるべきことをもれなく実行すること。細部に目が行き届いていること であると私は理解しています。

当たり前のことを当たり前にできることが成果能力であると思います。

2010年8月1日日曜日

書評 「ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階」

ジェームズ・コリンズ『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』日経BP社、2010年  定価 2,310円


ビジョナリーカンパニーの続々編です。

コリンズはドラッカーの影響を強く受けている人物ですので、基本的な企業観はドラッカーと同じです。

本書は大企業を想定して書かれていますが、そのエッセンスは中堅企業、中企業レベルには当てはまると思います。

・企業の衰退は次の5つの段階をたどる。

①成功から生まれる傲慢 :成功することで現実の厳しさから隔離される。勢いがあるのでまずい決定や規律の喪失があってもしばらく前進できる。  

②規律なき拡大路線 :あまり業績を上げられない分野に進出する。卓越性を維持できるペースを超えて成長しようとする。

③リスクと問題の否認 :内部では警戒信号が多数つみあがってくるが、外見的な業績が十分に力強いので心配なデータをうまく説明してしまう。

④一発逆転の追求 :急激な衰退がだれの目にも明らかであるため、一発逆転を狙ってしまう。

⑤屈服と凡庸な企業への転落か消滅 :財務力が衰え、士気が低下し、偉大な将来を築く望みをすべて放棄する。


こうした衰退のプロセスに陥らないためにコリンズは、規律ある人材、規律ある考え、規律ある行動 の3つを重視することを提唱します。

特に、規律ある人材を選ぶことができるかが重要になるといいます。ここにドラッカーの考えが大きく反映しています。

規律ある人材について、コリンズはドラッカーの思想を受け継いで次のように述べています。


不適切な人材はこれこれの「肩書き」をもっていると考えるのに対して、適切な人材は自分はこれこれに「責任」を追っていると考えることである。


また責任ある人材は、「どのような仕事をしているのですか?」という質問に対して「私はこれこれについて最終責任を負っている。」という回答ができるといいます。

規律なき人材はこの質問に答えられないとコリンズはいいます。