2012年1月4日水曜日

落合監督のプロフェッショナル論

3回にわたって落合監督の著書をご紹介しました。
落合監督のプロフェッショナル論とドラッカーの共通点を私なりにまとめると


1、プロは全力を尽くす

2、努力ではなく成果に焦点をあげる(結果がすべて)

3、(結果について)責任を負う


といったことになると思います。

もちろん、勝負師である落合監督の方がドラッカーが入っていることよりも厳しいですが、本質的にはほぼ同じ考え方であると思います。

逆に、「プロ野球選手よりもビジネスマンの方がより厳しい世界で戦っている」 と落合監督は述べています。

勝負を突き詰めることは、とことん合理的な行動です。落合監督は「理屈からするとこうなるはずだ」ということを極めているようです。

あの小さな体格で大男たちに混じって傑出した成績を残したのですから、頭はフル稼働させていたのですね。

また、余談ですが、本書の中で落合監督の現役時代に世間では「落合は外角打ちが得意だ」「外角をホームランにする技術がある」と信じられていたのがウソだったという話が面白かったです。

落合監督は小柄なので、外角をさばく体力は実は無かったのだそうです。そこで真ん中より手前の球を体をくるりと回す技術だけで処理していたということです。

内角の球をライトに運べるはずがないという先入観を持っていた評論家たちが、ライトへのホームランを見て勝手に「外角打ちがうまい」と誤解したのだそうです。

この誤解があったので、ピッチャーが内角に投げてくれたおかげで技術が活かせたのだそうです。

この秘密は現役時代には家族にも話さなかったということです。

「ここまで考え抜いていたのか」と驚かされました。

落合監督に限らず、超一流のプロフェッショナルの言葉はドラッカー理論ととてもなじみます。

今後も、折に触れて分析していきたいと思います。



(浅沼 宏和)

2012年1月3日火曜日

落合博満 「采配」 ③

続きです。

41. 現場の長は、「いつも」ではなく「たまに」見る。



42. 情報管理こそ監督の仕事。


43. 身内から嫌われるのが監督という仕事。


44. チームリーダーという存在によって、競争心や自立心が奪われていくことは、組織に置いてリスク以外の何物でもない。


45. 自分の腹の中を読まれてはいけない。それがプロフェッショナルの仕事である。


46. 今日の戦いに全力を尽くさなければ、明日も来年もないだろう。常に全力を尽くすことは明日に希望を見出すことだ。


47. 自分を大成させてくれるのは自分しかいない。100回バットを振った奴に勝ちたければ、101回バットを振る以外に道はない。自分で自分を成長させた選手がレギュラーの座を手にしていく。


48. 自分から練習に打ち込んでいる間は、オーバーワークだと感じてもストップをかけるな。


49. いい結果が続いている時でもその理由を分析し、結果が出なくなった時の準備をする。負けが続いた時もその理由を分析し、次の勝ちにつなげられるような負け方を模索すべきだ。


50. 組織を預かるものの真価は、0対10の大敗を喫した次の戦いに問われる。


51. 勝負の世界では一番と二番は天国と地獄の差がある。


52. どんな仕事でも、目立つ成果を求めるのなら、それに見合ったバックアップが必要だ。


53. 模倣とは一流選手になるための第一歩だ。


54. 「初」には大きな価値がある。


55. 歴史を学ばないことはその世界や組織の衰退につながる。歴史を学ぶことは同じような失敗を繰り返さないことにもつながる。


56. レギュラー、つまりチームにとって必要な人材の甘えを断ち切っておく。


57. 自分の職場に「居心地の良さ」を求めるな。「目の前にある仕事にしっかり取り組む」と割り切るべきだ。


58. 極論から物事の本質を見直してみる。


59. 勝ち続けることに全力を尽くす。


60. 世の中がどんなにスピーディーになっても後進や部下の育成には必要な時間をかけなければならない。


61. 監督がひとつの方向性を明確に示さなければチームは動きようがない。


62. 「絶対的な基本」はあるが「絶対的な方法論」はない。


63. リーダーにとって大切なのは、仕事を引き継いでいくことよりも自分自身の方法論を部下に明確に示すこと。


64. リーダーは、自分の属する世界への愛情、情熱、変革しようとする意欲で選ぶのがよい。



(浅沼 宏和)

2012年1月2日月曜日

落合博満 「采配」 ②

続きです。


21. 「今、一番大切なことは何か」だけは見誤ることなく、そこでの最善の手を打たなければならない。



22. 仕事では契約はすべてに優先する。行動を起こす前に「自分はどこと契約しているのか」「自分の仕事は何なのか」をしっかり見据え、優先しなければならない。


23. ただひたすら勝利を目ざしていくこと。そのプロセスそのものが人生だ。


24. レギュラーになって活躍するには①できないことをできるまで努力し ②できるようになったらその確率を高める工夫をし ③高い確率でできることはその質をさらに高める


25. 「手抜き」、つまり自分のできることをやらなかった時にはしかる。注意しなければ気付かないような小さなものでも「手抜き」を放置するとチームには致命的な穴があく。


26. 組織を統括するようになったら、部下たちに方法論を示し、それで部下を動かしながら成果を見せてやることが大切だ。


27. 好きにやることのは責任が伴う。好き勝手とは違う。それは「自分で考え、自分なりに行動すること」に他ならない。


28. 「特別扱い」ではなく「大人扱い」をする。自由が最大の規律になる。


29. 一芸に秀でた若者にはいい意味で将来の成長度合いを創造しきれないという魅力がある。


30. 平均点の中から一芸を磨き、スーパーサブという存在になるのも一つの手だ。


31. 厳しいことを言ってくれる人の言うことほど、しっかりと聞きなさい。


32. 高い技術を持っている人ほど、その難しさを熟知しているのでシンプルな表現を使おうとする。


33. プロだからこそ見なければわからない。プロだから見なくてもわかるという人は、自分が経験したもので時間が止まっている。


34. 自分の仕事だからこそ、まだまだ知らないことがあるはずだという謙虚な姿勢を持ち、仲間、ライバル、同業他社が何かに取り組もうとしている際には、深い関心を寄せながら観察してみるべきだ。


35. 自分にない色(能力)を使う勇気が、絵の完成度を高めてくれる。


36. 普段と違うのではないかと感じることができれば頭がその理由を探ろうと働き出す。固定観念を取り除けば多くの情報を得られることが多い。


37. レギュラークラスの選手からは「慣れによる停滞」を取り除かなければならない。


38. チームの勝ち負けの責任はすべて監督にあるが、自分の残した数字の責任は選手本人にある。


39. 競争で答えを出せなければ競争相手はどんどん増えていく。


40. 必死に競争した選手は心身ともにタフだ。

 
 
 
(浅沼 宏和)

2012年1月1日日曜日

落合博満 「采配」 ①

落合監督の著書の内容はドラッカーの仕事論にとても近い内容です。

概要をまとめてみました。

ドラッカーの仕事論と極めて似ています。

ポイントは「自力」「努力」「責任」です。




落合博満著 『采配』 ダイヤモンド社、2011年


1. 一人で決めねばならない。孤独に勝てなければ勝負には勝てない。



2. たとえ自分がうまくなっても、ライバルがもっとうまくなったら自分の地位は変わらない。そう実感すれば、今自分がすべきことが見えてくる。


3. 社会、あるいは組織に必要なものは「能力」である。「俺は一生懸命やったのに」と憤慨しても道は開けない。


4. 前向きにもがき苦しむ経験は、すぐに結果に結びつかなくても、必ず自分の生きる力になっていく。


5. 自分自身を適性のある世界に導く才能、セルフプロデュースする能力が必要だ。そのためには普段から目の前の仕事にベストを尽くすことが条件だ。


6. 練習でできないことは試合でもできない。


7. 1年でも長くユニフォームを着ていたいなら、休むということを考えてはいけない。


8. 「不安だから練習する」というのが原則。


9. 心技体ではなく体・技・心の順番である。体とは仕事をしていく体力である。技術を持っている人間は心を病まない。技術を身につけて自信を身につけるしかない。体・技の順序で強くなれば、心もタフになっていく。


10. 予習はいらないが徹底した復習が必要だ。飲み込みの早い人は忘れるのも早いことが多い。自分を不器用だと自覚している人ほどしっかりと復習する。


11. 仕事では自分のスキルを成熟させながら3つの段階の戦いに直面する。それは自分、相手、数字だ。数字と戦えるようになれば本当の一人前、一流のプロフェッショナルということになる。ただし、数字と戦うことは一流のプロでも容易ではない。


12. 3割を超えららない選手は3割を目標にしているケースがほとんど。3割の壁を突破していく選手は一度も3割をマークしていないにもかかわらず、3割3分当りを目ざしている。


13. 大きな成果を得るために何かを犠牲にすることもある。自分の目標を達成したり、充実した生活を送るためには必ず一兎だけを追い続けなければならないタイミングがある。


14. 選手は育てるのではなく、自分で育つものだ。自力があってこそ一流を目ざせる。


15. 一流には自力でなれるが超一流には協力者が必要。


16. 30代で何をしていくのかが極めて重要。20代ではしっかりした土台を築き、充実した30代にしていくべきだ。


17. 勝てない時は負けない努力をする。負けない努力が勝ちにつながる。


18. チームスポーツで「仕事をした」といえるのは、チームが勝ったときだけである。


19. 責任ある立場の人間は、この瞬間に最善と思える決断をするしかない。そこがブレてはいけない。


20. 勝利の方程式ではなく勝負を少しでも優位に戦っていくための原則論が必要。パーフェクトな理想を描き、それに一歩でも近づいていけるように現実的な考え方で戦っていく。

 
 
(浅沼 宏和)

2011年12月13日火曜日

書評 「起業という幻想」

『≪起業≫という幻想 -アメリカン・ドリームの現実』 スコット・シェーン、白水社

起業家精神旺盛な米国のイメージを覆すレポートです。
概要をご紹介します。


・米国での起業は一般的イメージと違って低調。OECD諸国の中でも起業率は最下位近い。

・多くはハイテク産業ではなく、サービス・建設・小売業で起業する。

・ほとんどの起業家はライバルひしめく業界で起業する。
  ⇒失敗しやすい産業で起業することで自分を失敗に追い込んでいる。

・起業家の多くは「他人の下で働きたくない」といった理由で起業している。

・“洞察力に優れた勤勉な起業家”は少数派であり、多くは頻繁な転職者、失業者、低所得者である。つまり「できないビジネスパーソン」の比率が高い。

・起業するビジネスの大半は「平凡」。 既存の製品・サービスを提供するだけで独自性がない。

・たいていの事業所は小規模。人を雇う比率は24%にすぎず、5年以上存続しているビジネスの半分は自宅で起業し、そこにとどまったままである。

・また5年以内に自宅から別の場所に引っ越したビジネスは全体の5%に満たない。

・たいていの起業家はアイディアを綿密に吟味していない。計画的に調査に取り組んだ比率は3分の1にすぎない。

・たいていの起業家は失敗する。 自営業の半数は7年以内に会社勤めに戻る。 5年生存率は45%、10年だと29%に低下する。

・起業家のビジネスはたいてい儲からない。 平均的自営業者は平均的勤め人に比べて著しく低い。

・起業家の多くは勤め人より長時間労働をしている。

・起業する理由①: 楽観的なおろか者だから

 起業者の81%が自分の成功を信じていたが、実際には成功率は低い。

・起業する理由②: 創業者の満足

 自分のために働くことに対する満足感



全般的に言えることは日本に創業の現状と近いということです。

この結果は私の感覚からも納得性があります。

起業するということは大変であることだけは再確認できました。



(浅沼 宏和)

チームを作る

ドラッカーのマネジメント論に置いてもチームは大きく扱われています。

チームで成果をあげるために忘れてはならないことがあります。

まず、目標の設定があります。行くべき方向が明確でなければチームは意味をなしません。

次に、仕事を具体的な活動や作業に分解し、プロセスにまとめ上げ、それを役割にすることで人を組織化します。

この次に来るのがチームのマネジメントになります。

チームのマネジメント論に置いて、この目標設定と具体的な仕事にすること、役割の組織化について説明されていることが少ないようです。


無目的で役割のあいまいなチームというものはマネジメントできません。



(浅沼 宏和)

2011年12月12日月曜日

仕事の定義について

ドラッカーはあらゆることを成果に結びつけて説明することで一貫しています。


すると 仕事とは成果をあげるプロセスである と定義されることになります。

具体的には成果をあげる基本的な習慣を身につけて日々実践する必要があるとドラッカーは指摘しています。

その際に、もっとも重要視されているのが真摯さです。

真摯さとは要するに「一生懸命さ」といったものです。

できるビジネスパーソンとは成果をあげる能力のある人のことですが、それに至らない人はどうするべきでしょうか?


ドラッカーは「仕事を大きくする」必要があると言っています。

これは具体的に言うと、自分の現状の能力の限界に挑戦するような仕事が必要であるということです。

これを持たなくなった時点で、人は下り坂に入るわけです。

ベテランといわれるヒトが特に注意すべきなのはこの点です。

かつての必勝パターンが通用しなくなったときに、これを打開するような高い目標設定を行えるかどうかが生き延びるために必要でしょう。


『究極の鍛錬』の著者のジョフ・コフヴァンは、一流のバイオリニストたちと平凡な人たちとの調査から、一流は累積練習量が圧倒的に多いことを見つけています。

また最高水準の業績をあげている人たちは、その地位を得るために多くの年月を要しているとも指摘しています。

つまり才能ではなく「姿勢」の問題であるというわけです。



(浅沼 宏和)

2011年12月7日水曜日

ブルース・リーの名言集がビジネス・ワンポイントに紹介されていました。



増やすな 捨てろ


おまえは考えたように変わる


考えるな 感じろ


状況等気にするな 機会は己で作り出せ


常に己であれ 己を表現し、己を信じろ


俺はお前のために生きているのではない お前も俺のために生きているのではない


もともとは武道家向けの格言ですが、プロフェッショナル論になっているところがさすがにブルース・リーです。



(浅沼 宏和)

2011年12月6日火曜日

仕事は大きくする

『エッセンシャル版 マネジメント』 p.131


もっとも一般的なまちがいは、職務を狭く設計し、優れた者であっても成長できなくすることである。

数年ですべてを身につけられるほど狭く設計した職務では、欲求不満に陥る。

結局、さしたる働きもしなくなる。



仕事の設計は「その人の能力にピッタリ」ではいけないわけです。

チャレンジ性のない仕事は、その人の能力を陳腐化させてしまいます。

チャレンジ性のない仕事を何年も続けているとビジネスパーソンとして危険です。

これはもちろん経営者にも言える話ですが。


(浅沼 宏和)

2011年12月5日月曜日

日経ビジネス:カールツアイスの社長インタビュー

ドイツが誇る世界的光学機器メーカーのカールツアイス社の社長インタビューが日経ビジネス2011.12.12号に掲載されていました。


同社はドラッカーの『マネジメント』において働くこと(working)をうまくマネジメントした企業事例として紹介されています。

『マネジメント』は1973年の本ですし、紹介された内容は同社の19世紀末の成功事例です。

ということで、その続編ともなるべき内容と思いますので紹介します。

同社は上場しておらず、財団所有という珍しい法形式の巨大企業という特徴もあります。


・オリンパスの技術力はすばらしく、以前からベンチマークしていたが同社を買い取る可能性はない。
・カールツアイスは非公開企業であり、資本が潤沢にあるわけではない。だから、内部からの成長に注力してきた。これこそが強みだ。
・財団であることで四半期ごとに市場からプレッシャーを受けることがない。長期的なイノベーション計画が立てられる。
・医療やレンズなどは高度な技術が必要なので長期的視点に立つことは不可欠だ。
・非上場であるため資金調達は難しいので財務的健全性により一層気を使う。


ドラッカーが成功事例として取り上げた100年前とは色々変わっているところもあるのでしょうが、DNAがよく残されているという感じがします。

以下、ドラッカーの著作でのカールツアイスの働き方のマネジメントの部分を簡単にまとめておきます。

・仕事に必要なプロセスを分析し、それを全体にまとめ上げることで成果をあげた。
・職務の編成は実際に働いている人たち自身が行った。
・機械や工具などを働く人たち自身が設計・改良した。
・継続的訓練の導入、作業方法の改善、新製品開発、工程や技術の改良は当然行われるべきものとされた。
・製品や仕事について働く人たちに情報をフィードバックした。
・正式な雇用保証はないが、成果をあげる意欲と学ぶ姿勢があれば景気とは無関係に雇用を保証した。


カールツアイスのマネジメントはうわべの合理性よりは本質的なものを追求する伝統があるようです。


(浅沼 宏和)