2011年8月20日土曜日

事業は何か

ドラッカーが企業のマネジメントに置いて最も重視していることは事業の定義です。

『マネジメント』の中で、その具体例として、AT&Tの事業の定義の決定の背景を説明しています。

1910年前後のAT&Tの経営者であったセオドア・ヴェイルは、自社の事業の定義を「サービスである」と決定しました。

これだけでは、意味が分かりにくいので、もう少し詳しい定義に書き直します。


電話事業は地域独占事業であるため、公営事業化されやすい。
また、先進国では民営であることが例外的であった。
アメリカの電話事業会社として民営企業のままでいるためには、世論の支持が不可欠である。
世論の支持は、AT&Tを公営事業化する意見の持ち主を批判するだけでは得られない。
つまり、世論の支持には顧客満足が必要なのだ。
であるから、当社の事業はサービスでなければならない。

というものです。

こうした定義の仕方は時代を経ても通用するものです。


(浅沼 宏和)

2011年8月17日水曜日

目標管理と自己管理

ドラッカーは『マネジメント』の中で、目標管理の注意事項について述べています。


マネジャーが自分の業績を管理するためには、目標を心得ておくだけでは十分とは言えない。
目標と比較しながら、活動ぶりや成果を測定できなければいけないのだ。
事業の主要分野すべてに共通する明快な尺度をマネジャーたちに提供することを慣習として定着させるべきである。

尺度は厳密な意味で定量的である必要はなく、正確である必要もない。
ただし、シンプルでわかりやすく、理にかなっていなくてはならない。
測定にふさわしく、注意や努力をあるべき方向へと導くものでなくてはいけない。



私はこれについて、打ち手の数と得られた成果を数えるというやり方を模索しています。


たとえば顧客に対して主体的な働き方を行う、相談・頼まれごと等を受ける、予期せぬよいことが起きる、商談が成立する等の事実を数えるのです。

私の場合には、これらに★をつけることをルール化し、上がった成果・効果の大きさに応じて星一つから三ツ星までランク分けをするといったやり方をしています。


すると、「今月は★22個、★★5個、★★★2個だった」というように成果を可視化できるわけです。

星のつけ方について少し具体的なルールを作ればどのような組織であっても使えるのではないかと思っています。

これは非常に簡便なやり方ですが、わかりやすく効果的であると思います。

組織で導入しなくてもビジネスパーソンが成果を自己管理をするにはこれで十分です。


組織が目標管理制度を導入する場合、複雑なやり方ですと覚えるのに大変で、運用で挫折するような気がします。

私はどのような組織であってもこうしたシンプルなやり方の延長上で考えて、それぞれの組織に合った形でカスタマイズすることがよいと思っています。



(浅沼 宏和)

マネジャーの目標設定の具体例

ドラッカーは『マネジメント』の中で、マネジャーの目標設定の正しいやり方の事例を説明しています。


‥‥各マネジャーがまず上司と自分の職務上の目標を自分なりの理解に従ってしたためる。
次に、自分の課せられた業績基準を書く。
つづいて、目標を達成するためになすべき事柄を列挙する。
あわせて、部門内の主要な障壁も書きだす。

上司や会社の行いの中から、自分の助けになっていることがら、足を引っ張っている事柄を、それぞれあげる。
最後に、目標を達成するために次年度は何をするかを提案する。

上司の承認が得られると、この「マネジャーの手紙」は、書いた本人にとっての業務上の憲章となる。


シンプルですが目標管理制度の骨子を良く伝えているやり方であると思います。



(浅沼 宏和)

2011年8月16日火曜日

マネジャーの目標の決め方

ドラッカーの『マネジメント』の記述です。


‥目標を承認するかどうかの権限は、より上位のマネジメント層がもつのが筋である。
だが、目標の設定そのものはマネジャーの責任範囲に含まれる。というよりマネジャーの第一の責任である。
つまりマネジャーは、上位の組織の目標設定にかかわる責任をも担っているのだ。


‥マネジャーであるとは、責任を負うことを意味する。
マネジャーの目標は、上司や自分が何を望んでいるかではなく、事業の客観的な要請を映し出しているべきだ。


‥事業の究極的な目標は何か、自分には何がどのような理由で期待されているか、どのような尺度と方法で成果が得られるのかを知り、理解しなくてはならない。



ドラッカーの考えるマネジャーは自分の役割について自分の頭で考え抜く人のことです。

優秀なサッカー選手のようなイメージでしょうか。


(浅沼 宏和)

マネジャーが目標とすべきもの

マネジャーの目標設定に関するドラッカーの記述です。


「お偉方」から、生産現場の職長や事務長に至るまで、マネジャーはみな明確な目標を持たなくてはならない。
さもなければ、混乱が生じるのは目に見えている。
目標には、配下のチームがどのような業績を目指すかも、盛り込むべきである。


‥つまり、初めからチームの成果とチームワークに重点を置くべきなのだ。

目標は常に、会社のゴールをもとに決めなければならない。

‥マネジャーはみな、すべての事業分野における会社の目標達成を支えるために、自分がどれだけ貢献するかを明確に示すべきである。




ドラッカーの目標による管理の基本的な考え方です。

ドラッカーはガチガチな制度ではなく、制度の不備を各人の貢献意識で補うような考え方を持っているように思われます。

それがよかったのかどうかは組織の成果によって判断できるということです。



(浅沼 宏和)

報酬体系について

ドラッカーの『マネジメント』から賃金体系の考え方について抜き書きします。


どのような報酬体系においても、金銭は決してガラス張りではなく、繊細な価値観や性質をあらわす。
このため、本当の意味でシンプルで合理的な報酬体系などあり得ないのだ。‥






‥「科学に根差した方程式」を持ち込もうとしても完璧な成果は期待できない。






最善の報酬プランといえども、組織をまとめ上げる一方で分裂の芽を生み、方向付けをする一方で誤った方向へもそれる。
そして正しい行動だけではなく、望ましくない行動をも引き起こすのだ。‥






複雑な体系とシンプルな体系とでは、後者を選ぶべきである。
お仕着せの方程式を一律に当てはめるよりも、裁量の余地を残し、各人の職務内容に会った報酬を支払うべきである。



これがドラッカーの賃金体系の考え方です。

これに反して複雑で計算式を多く用いるような人事制度、報酬制度を導入されている例が多くありますが、運用のためのコストは多くなる一方で、それに見合ったメリットがあるかというと疑問が残ります。

人の作る制度には限界があるということを忘れず、適切な運用によって求める姿を実現することが大切であると思われます。



(浅沼 宏和)

2011年8月10日水曜日

◆拙著刊行のお知らせ

8月5日に拙著が刊行されました。


『ドラッカーが教えてくれた経営戦略シート』


浅沼宏和 著/中経出版

定価 1,500円+税



この本の目玉は事例が豊富であることです。

私が開発した経営戦略作成シートに書き込む形で各社の経営戦略を分析しました。

有名企業5社

1、ユニクロ(ファーストリテイリング)
2、青山フラワーマーケット
3、ガリバーインターナショナル
4、シマノ
5、オイシックス


中小企業5社

1、ゴトー理研
2、クリエイティブシステム
3、エコム
4、大和製作所
5、島田工業


中小企業は社員数15~40名程度の本当に身近な規模の企業ばかりです。

大手企業であろうと中小零細企業であろうと同じフォーマットで経営戦略を語れるところが特徴です。



(浅沼宏和)

2011年8月4日木曜日

ポーター 「トレードオフ」

ポーターの戦略論とドラッカーの類似点を示す部分をもう少し説明します。


戦略においては、何をするかという選択と同じくらい、何をしないかという選択が重要になってくる。

‥どの顧客グループをターゲットとし、どの製品種類やニーズに対応するかという決定は、戦略策定の基本である。

しかし、それと同様に、どの顧客やニーズを無視するのか、どの仕様やサービスを提供しないのかという意思決定も重要である。



ドラッカーの場合、戦略の要素の一つとして「集中」をあげています。集中とは一つを選び、残りを選ばないことを明確にすることです。

これはポーターの言うトレードオフに他なりません。


トレードオフとは両立できない二つの選択肢の一つを選ぶことであり、これこそが戦略であるというのがポーターの主張です。



(浅沼 宏和)

2011年8月3日水曜日

ポーター 「リーダーの役割」

ポーターは戦略におけるリーダーの役割について次のように述べています。

‥積極的に選択を行う意思を持った強力なリーダーが不可欠である。

‥多くの企業では、リーダーシップは単にオペレーションの改善や取引を調整するだけの存在になり下がっている。


‥企業経営とは、個々の機能の行司役を務めることではない。その中核には戦略がある。

自社の独自のポジションを定義・伝達し、トレードオフを行い、活動相互のフィットを育てるのが経営である。



ドラッカーはリーダーシップとはカリスマ性の問題ではなく具体的な「仕事」であるといっています。

そしてリーダーは組織・チームの進むべき方向を示し、各人の役割を定め、責任を負わせ、成果をあげさせる者としてとらえていました。

上記のポーターのリーダー論はドラッカーの理論と矛盾していません。

ポーターの競争戦略論は他社の裏をかいてうまいことをやるようなイメージでとらえる人もいます。

しかし、一つ一つの活動を丁寧に積み上げて独特のフィットを生み出そうとするポーターの戦略論は結構正攻法について書いてあると思います。



(浅沼 宏和)

2011年8月2日火曜日

ポーター「競争の二つの意味」

ポーターの関心は企業同士の競争にありました。

どのように競争するかが戦略であるというのが基本的な考え方です。


ポーターの初期の著作では業界内で独特のポジションをとることで競争を避けることの大切さが強調されていました。

後期の著作では企業経営における立地の重要性を指摘し、互いに競争することでレベルが上がることが強調されていました。


つまりポーターは一方では競争を避けるべきものと説明し、他方では競争によってレベルが上がるともいっているのです。


たとえるならば次のような意味であると思われます。


サッカーや野球などの人気スポーツは競技人口が多いため、お互いの切磋琢磨によって全体のレベルが引き上げられます。

これがポーターの後期の意味での競争の本質であり、好ましい競争であるわけです。



また、プロ選手となった人たちはトップ・レベルでの競争において自身の価値を認めてもらうために他の選手とは違う独特の強みを磨き、なくてはならない選手になろうとします。

これが初期の意味での競争です。


このように考えるとポーターの競争の定義は整合性を持って説明されると思われます。



(浅沼宏和)