2011年5月1日日曜日

書評-「ユニクロ帝国の光と影」①

横田増生『ユニクロ帝国の光と影』文藝春秋、2010年  定価 1,500円  


本書は、初めてといっていいほどユニクロについて批判的な視点から書かれた本でしょう。

私も今一つアパレル業界のビジネスモデルについて理解が生き届いていなかったことが本書を読んでわかりました。

また、本書は柳井正氏の個人的資質や生い立ちにユニクロのビジネスモデルのルーツを見出している点で、「成功する経営戦略の誕生の秘密」と一端がうかがえるという意味でも重要であるように思います。

柳井正氏は「模範的なドラッカー経営の実践者」としての評価が確立されていますから、私としても正面から向き合って読むべき本となっています。

さらに、製造小売り業の世界ナンバーワンである『ZARA』との比較、凋落しつつあるGAPのビジネスモデルとの比較なども行われている点が有益です。

本書は基本的に柳井正氏にかなり批判的です。

柳井氏の経営手法の問題点も相当数掲げられています。

柳井氏の尊敬するダイエーの中内功氏、日本マクドナルドの藤田田氏がそれぞれ最後には厳しい批判を浴びたように柳井氏も同様の目にあうであろうという余韻を残した終わり方となっています。

横田氏の視点はそれなりに説得力があるのですが、少し偏った見方のようにも思われます。

しかしながらユニクロのビジネスモデルについて客観的に見ようとしている点では情報価値が高いので経営者にはお勧めの本です。


(浅沼 宏和)